2016年11月02日

利用しているのは誰?-ふるさと納税シリーズ(5)ふるさと納税に関する現況調査結果より

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任 高岡 和佳子

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4――都市部と地方部の所得格差の影響だけではない

図表3:一人当たり課税対象所得と利用率の関係(納税義務者が少ない市区町村対象) そこで、図表2が示す傾向が、制度の由来に起因するのかどうかを二つの方法を用いて確認する。

まず、対象を地方の市区町村に限定し、一人当たり課税対象所得とふるさと納税の利用率が正の相関関係にあるかどうかを確認する。なお、地方の判断は3章と同様に、市区町村毎の納税義務者数によって判断する。具体的には納税義務者数が1万人未満の市区町村を地方と分類する場合、同様に1万5千人未満の市区町村を地方と分類する場合、2万人未満を地方と分類する場合の3パターンを用いる。結果は、地方の判断に用いる納税義務者数により異なるが、相関係数は0.4前後で(図表3)、地方に限定しても、一人当たり課税対象所得が高いほど、ふるさと納税の利用率が高い傾向が確認できる。
図表4:一人当たり課税対象所得と利用率の関係(東京23区対象) 次に、東京23区を対象に、一人当たり課税対象所得とふるさと納税の利用率の関係を確認する(図表4)。図表3と同様、一人当たり課税対象所得が高いほど、ふるさと納税の利用率が高い傾向が確認できる。加えて、利用率が8%を超える区が3区もあることが読み取れる。

以上から、図表2が示す傾向は都会の居住者を対象とする制度の由来を反映していることだけが原因とは考えにくい。

 
納税義務者が多い都会ほど一人当たり課税対象所得が高い傾向も手伝って、ふるさと納税の利用者は都会の居住者に偏っている。しかし、ふるさと納税の利用者の中心は都会の居住者と解釈するのは正しくない。やはり、ふるさと納税の利用者の中心は、より多くのメリットを享受可能な高額納税者と解釈すべきだろう。納税義務者数が2千人に満たない地方の市区町村だが、一人当たり課税対象所得が高い市区町村もある。その中には、ふるさと利用率が3%を超える市町村が複数あるのも事実だ。
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金融研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任

高岡 和佳子 (たかおか わかこ)

研究・専門分野
リスク管理・ALM、価格評価、企業分析

(2016年11月02日「基礎研レター」)

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