2016年10月31日

インドの生命保険会社の状況-2015年度の決算数値を踏まえての成長性・効率性・収益性・健全性等の動向-

中村 亮一

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3|運用利回り
各社の運用利回りの推移を示したのが下の図表である。これは、基本的に、契約者ファンド(ノン・リンク型・有配当)に対するものであり、LICの数値のみが、契約者ファンド平均に対する数値となっている。

これによれば、金利水準を反映して、各社とも引き続き高い運用利回りが確保されている状況にある。

インドの生命保険会社の資産運用においては、ユニットリンクファンド以外の資産では、中央や州の政府発行・保証の有価証券のウェイトが6割程度と高くなって
おり、その水準はここ数年上昇してきている。
運用利回り/生命保険会社(ユニット・リンク・ファンド以外)の資産構成比(2014年度末)
インドの10年国債利回りの推移(%) 参考)インドにおける金利の推移
右図が、インドの10年国債の利回りの推移
を示している。

他の先進諸国とは異なり、引き続き7%台の利回りを確保しており、現状では低金利に悩まされているという状況ではない。

このように高位安定した金利水準を背景に、各社は着実な運用収益を挙げるとともに、その成果を配当として、契約者に還元してきている。
 

4―収益性の状況

4―収益性の状況

1|会社全体の収益状況
LICと民間の5社の収益状況を比較した場合、商品や販売チャネルの違い等から、保険料との比較での収益性は大きく異なる状況となっている。なお、利益水準は、責任準備金評価のための計算基礎の設定によっても影響を受ける形になっている。

各社とも、保険料及び利益の実額を着実に進展させてきているが、対保険料利益率で見た場合、LICは水準が低い中でも改善させているのに対して、民間5社は水準は高いが傾向としては低下してきている。
利益(税引後)の状況
2|商品種類別の収益状況
なお、ICICI Prudentialは、商品種類別の収益状況も開示しており、それが以下の図表の通りである。

これによると、これまでは、年金保険(リンク型)が高い収益を上げる形になっていたが、この2年間は、生命保険(有配当)と生命保険等(無配当)の収益が、実額及びウェイトとも高まってきている。
ICICI Prudentialの剰余の商品種類別内訳

5―健全性等の状況

5―健全性等の状況

1|責任準備金の計算基礎
インドの生命保険会社の責任準備金の計算基礎については、全社統一の計算基礎率が定められているわけではない。毎年度末決算において、それぞれの会社の状況を踏まえて決定されるため、各社毎に異なっている。ロック・フリー方式4で定められるため、契約毎に毎年の計算基礎率が変化することにもなる。以下では、代表的な計算基礎である、予定利率と予定死亡率の状況について、報告する。

(1)予定利率
個人生命保険(有配当)契約の場合の水準について、各社の状況を見てみると、民間の5社に比較して、LICが相対的に高い予定利率を採用している。

なお、2014年度から2015年度にかけて、民間の3社が予定利率の引き下げを行っている(以下の図表において、2014年度から2015年度にかけて、変更が行われた部分に網掛けを行っている)。

LICの予定利率については、商品毎に異なっており、無配当商品では有配当商品よりも低い予定利率を採用しているケースもある。これは、一般的に、有配当と無配当のファンドの期待利回りや配当によるバッファー的要素を反映したもの、と説明されているようである。
責任準備金計算基礎(予定利率)―個人生命保険(有配当)契約の場合―/責任準備金計算基礎(予定利率)―LICの場合(個人保険商品毎)―
事業年度毎の予定利率の変化については、LICの場合、個人生命保険(有配当)では、過去の5年間同水準で推移してきたが、2015年度は引き下げを行っている。さらに、個人年金保険(有配当)では、以下のように、過去から引き下げを行ってきている。
責任準備金計算基礎(予定利率)―LICの個人年金保険(有配当)の場合(事業年度毎)―
 
4 責任準備金評価において用いる計算基礎について、契約時に使用したものを固定(ロック・イン)するのではなく、評価時毎にその時々に適正と考えられる計算基礎等で評価する方式
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中村 亮一

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