2016年10月27日

“健康経営”と企業の業績~ニッセイ景況アンケートによる健康増進に向けた取組みと業績の相関

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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(2) 製造業・非製造業別の状況
次に、製造業、非製造業別にみると、いずれも従業員の健康増進に関する取組みが前向きな企業で、売上「増収」と経常損益「増益」が高かった(図表5)。また、金融機関の貸出態度「積極」については、中小企業と同様に従業員の健康増進に関する取組みが前向きな企業で高かった。
図表5 健康増進に対する取組み実施状況別 売上、経常損益、貸出態度(4)

4――まとめ

4――まとめ

以上より、大企業だけでなく、中堅・中小企業においても、従業員の健康保持・増進への関心が高まっている企業や、取組みを多く実施している企業など、従業員の健康増進に関する取組みが前向きな企業で業績が良い傾向があることがわかった。金融機関の貸出態度は、大企業と中堅企業では、5年程度継続する取組み数以外は差がなかったが、中小企業では、健康増進に対する考え方や現在実施している取組み数による差も大きく、従業員の健康増進に関する取組みが前向きな企業で「積極」の割合が高かった。こういった健康増進に向けた取組みと業績等との関係は、製造業、非製造業いずれでも見られた。

ただし、本分析では、健康増進に関する取組みを実施している企業と業績とに相関があること示したに過ぎず、「健康経営を進めた結果、業績が良くなった」のか、「業績のいい会社が、健康経営を進めている(進める余力がある)」のかの因果関係はわからない。しかし、「業績のいい会社が、健康経営を進めている」のだとしても、業績が良い企業が、従業員の健康増進に関する取組みに前向きになるのであれば、それは国民の健康寿命の延伸にも有効であり望ましいだろう。

また、本稿では、業績等を客観的な指標ではなく、アンケートの回答で得ているため、回答者によっては、いずれの設問にも楽観的に回答するなどの主観によるバイアスが生じている可能性がある点には注意が必要である。
 

[参 考] 健康増進に関する各設問の集計結果

[参考] 健康増進に関する各設問の集計結果

【従業員の健康保持・増進に対する考え方】/【現在実施している取組み数】/【5年程度継続している取組み数】
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療、生保市場調査

(2016年10月27日「基礎研レポート」)

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【“健康経営”と企業の業績~ニッセイ景況アンケートによる健康増進に向けた取組みと業績の相関】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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