2016年10月19日

通貨スワップ市場の変動要因について考える-通貨スワップの市場環境が与えるヘッジコストへの影響

金融研究部 金融調査室長・年金総合リサーチセンター兼任 福本 勇樹

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■要旨
 
  • リーマンショック後より、通貨スワップ市場においてクロスカレンシー・ベーシス・スワップ(スワップ・スプレッド)がマイナス方向に拡大し、現在もマイナス圏で推移している。
     
  • スワップ・スプレッドがマイナスの場合、ヘッジ付きの外貨建て投資に関して、ヘッジコスト(外貨調達コスト)が運用利回りを低下する方向に作用することになる。
     
  • スワップ・スプレッドがマイナス圏を推移する原因について分析を行った結果、銀行システムの信用リスク、銀行や機関投資家による外貨調達や為替リスクのヘッジニーズ、資金市場における流動性に関するストレスなど、いくつかの要因が複合的に作用しており、2013年あたりに構造変化を伴っていることが分かった。
     
  • 現在は、特に日米における金融政策の方向性の違いや金融規制による米国短期金融市場の貸出スタンスに関するストレスの高まりがテーマになっているものと思われる。
     
  • これらの要因についてはすぐさま問題が解消するわけではなく、スワップ・スプレッドがマイナス圏を推移する状況はしばらく続くものと思われる。

■目次

1――通貨スワップと金利平価の関係
2――通貨スワップの市場環境が運用利回りに与える影響
3――銀行システムの信用リスクの観点
4――資金調達ニーズの偏りの観点
5――各資金市場における流動性の観点
6――まとめ
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金融研究部   金融調査室長・年金総合リサーチセンター兼任

福本 勇樹 (ふくもと ゆうき)

研究・専門分野
金融・決済・価格評価

経歴
  • 【職歴】
     2005年4月 住友信託銀行株式会社(現 三井住友信託銀行株式会社)入社
     2014年9月 株式会社ニッセイ基礎研究所 入社
     2021年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・経済産業省「キャッシュレスの普及加速に向けた基盤強化事業」における検討会委員(2022年)
     ・経済産業省 割賦販売小委員会委員(産業構造審議会臨時委員)(2023年)

    【著書】
     成城大学経済研究所 研究報告No.88
     『日本のキャッシュレス化の進展状況と金融リテラシーの影響』
      著者:ニッセイ基礎研究所 福本勇樹
      出版社:成城大学経済研究所
      発行年月:2020年02月

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