2016年10月05日

米国における個人生命保険の販売動向(2015)-グラフで見る40年間の動き-

松岡 博司

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【新契約年換算保険料基準】
新契約年換算保険料を基準に取ると、ユニバーサル保険(-5%)、変額ユニバーサル保険(-7%)が構成比を下げ、終身保険が+13%と大きく構成比を上げている。

定期保険の構成比はほとんど変化がない。

【新契約保険金額基準】
新契約高を基準に取ると、最大構成比の定期保険(-4%)と変額ユニバーサル保険(-3%)が構成比を下げ、ユニバーサル保険(+3%)と終身保険(+4%)が構成比を上げている。

死亡保障に特化した保険商品である定期保険は、貯蓄要素がないので保険料基準での構成比は小さいが、保険金額基準では全体の3分の2を占める最大商品となる。

【新契約数基準】
販売された新契約件数を基準に取ると、定期保険(-3%)と変額ユニバーサル保険(-2%)が構成比を下げ、この2商品のシェアダウン分を終身保険(+5%)が取っている。ユニバーサル保険の構成比に変化はない。

新契約年換算保険料を基準とする統計からはわからないが、新契約数基準の統計から見る限りは、米国で個人生命保険を購入している消費者の88%が終身保険、定期保険という伝統的生命保険商品を購入している。金融危機前の水準と比べても、件数ベースでの伝統的生保商品2種への回帰が激しい。


表1は、金融危機前の2007年と2015年に販売された保険種類ごとの1件あたりの平均保険金額と平均年換算保険料である。これまで活用してきた統計資料とデータソースが異なり、調査対象生保会社数が違うため、データの一貫性はないが、一定の傾向をつかむことはできる。

かつてニューウェーブ商品と呼ばれたユニバーサル保険、変額ユニバーサル保険は、販売件数は決して多くはないが、1件1件は大型の契約であり、年換算保険料基準、保険金額基準では、件数構成比以上の構成比を占めることがわかる。
表1 商品種類別新契約1件あたりの平均保険金額と平均年換算保険料の変化(2007年→2015年)
グラフ5で見たとおり、新契約販売件数基準では、ユニバーサル保険の構成比は2007年と2015年で変化なく、変額ユニバーサル保険の構成比は2%減と若干減少している。一方、終身保険の新契約年換算保険料基準での構成比は10年連続で高まってきている。低金利による予定利率の引き下げもあって終身保険の平均年換算保険料は2007年から約1.4倍と大幅に増加している。
近年の年換算保険料基準での業績回復、新契約保険金額基準での伸び悩みは、販売商品構成の変化、ひいては顧客ニーズの変化に左右されている側面が大きい。
 

4――さいごに

4――さいごに

米国における個人生命保険販売は、メイン指標である新契約年換算保険料で見る限り、金融危機前の水準まで回復した。しかし、その内訳を見ると、投資ニーズに対応し、新時代の生保ビジネスとなるかと見られた、保険金額、保険料とも規模の大きい大型契約である変額ユニバーサル保険の販売件数の構成比が3分の1にまで激減し、保険金額、保険料とも小口である終身保険の販売件数構成比が増えるという構造変化が続いている。

また、ユニバーサル保険の販売においても、従来の所定の短期金利を貯蓄部分に保証する形態のものから株価指数等の、何らかの指数に連動して貯蓄部分の増分が決まる形の指数連動型ユニバーサル保険への振り替わりが続いている。

こうした動向からは低金利状態が長引く中で、できる限り安全でそれなりの安定性と有利さを持つ生保商品を購入したいという顧客ニーズの変化を見ることができるだろう。
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松岡 博司

研究・専門分野

(2016年10月05日「保険・年金フォーカス」)

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