2016年09月12日

企業物価指数(2016年8月)~前年比で下落幅縮小も、円高で下落基調は継続

岡 圭佑

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輸入物価指数の変動要因 輸入物価(円ベース)の変化率を為替要因と契約通貨ベース要因に分解してみると、契約通貨ベース要因による物価下落圧力は弱まっているものの、為替要因による物価下落圧力が強まっているため、輸入物価は大幅な下落を続けている。

8月の為替レート(月中平均)は、1ドル=101.3円(7月:104.0円)と前年に比べ17.8%(7月:15.7%)の円高水準となった。その後、米国の利上げ観測、日銀の追加緩和期待の高まりを受けて、9月の為替レート(月中平均)は1ドル=102.8円(前年比14.4%の円高水準)と若干円安が進行している。 

原油価格など国際商品市況の持ち直しによって輸入物価の下落圧力は緩和されている。しかし、為替レートは前年比で依然大幅な円高水準にあり、先行きも円ベースでの輸入物価の上昇を抑制するため、下落幅の縮小は緩やかなものとなるだろう。

3.最終財への下押し圧力が続く

8月の需要段階別指数(国内品+輸入品)をみると、素原材料が前年比▲25.6%(7 月:同▲25.5%)、中間材が前年比▲7.3%(7月:同▲7.8%)、最終財が前年比▲3.9%(7月:同▲3.8%)となった。

円高進行に伴う輸入物価の大幅な下落を受けて、素原材料が大幅なマイナスを続けており、最終財は下落基調を強めている。足もとでは原油価格が緩やかに持ち直しているものの、先行きも円高に伴う輸入物価下落の影響が素原材料、中間財を経由して最終財に波及することから、消費者物価(生鮮食品を除く総合)と関連性の高い最終消費財はマイナス圏の推移が続くとみている。
国内需要財の要因分解/最終財と消費者物価

4.先行きも国内企業物価の持ち直しは緩慢

円高による輸入物価の下落圧力が強まるなか、8月の国内企業物価は原油価格の持ち直しを主因に、7月から下落幅を幾分縮小している。ただし、前月比(夏季電力料金引き上げの影響を除く)では3ヵ月連続でマイナスとなっており、物価の下落基調は継続している。

先行きは原油価格の持ち直しを主因に、為替・海外市況連動型や電力・都市ガス・水道の下落幅が縮小することから、前年比でみた国内企業物価は下げ幅を縮小することが見込まれる。ただし、依然として円高基調が続いていること、中国の過剰供給を背景に鉄鋼や非鉄金属が軟調に推移していることから、国内企業物価の持ち直しは緩やかにとどまるだろう。
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(2016年09月12日「経済・金融フラッシュ」)

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