2016年08月30日

【アジア・新興国】不動産投資家として存在感を増すアジアの保険会社~台湾、韓国に続き、中国本土の保険会社も不動産投資を本格化~

増宮 守

文字サイズ

3―アジアの保険会社による不動産投資の拡大

不動産取引がピークアウトする一方、比較的保険市場の大きいアジア4カ国2について大手保険会社の保有不動産金額をみると、日本を除く3カ国では、ほとんどの大手保険会社が保有不動産金額を2015年度に拡大していた(図表-3)。2015年の円高およびアジア通貨安を踏まえると、現地通貨ベースでは拡大幅はさらに大きかった。以前から不動産投資に積極的であった台湾や韓国の保険会社に続き、規制緩和3によって参入した中国本土の保険会社も不動産投資を本格化しつつある。

最も不動産投資に積極的な台湾の保険会社をみると、最大手の国泰人寿保険(キャセイライフ)が引き続き不動産投資を拡大し、総資産規模では遥かに大きい日本生命保険を上回り、アジアの保険会社として最大の不動産投資家となった。また、その他でも、富邦人寿保険や台湾人寿保険など、不動産投資を積極化した保険会社が複数みられた。

台湾の他では、中国本土の保険会社の動向がさらに目を引き、大手の中国平安保険と中国人寿保険が揃って大幅に保有不動産金額を拡大した。中国本土の大手保険会社は、不動産投資経験が短いため総資産に対する不動産比率は低いが、総資産規模自体が非常に大きいことから、営業用も含めた保有不動産金額は既に韓国の大手保険会社を上回っている。
図表-3 アジアの大手保険会社の保有不動産金額(投資用+営業用)
 
2 アジアでは保険市場が小さい国が多く、不動産投資市場で一定の存在感を発揮する規模の保険会社は日本、中国、台湾、韓国の保険会社に限られるといえる。
3 2009年2月の「改正保険法」の承認、2010年7月の「保険資金運用管理暫定弁法」および8月の「保険資金の運用政策に関する問題を調整するための通知」の発表による。
 

4―アジア各国の保険市場の成長

4―アジア各国の保険市場の成長

このようなアジアの保険会社による不動産投資の拡大は、各国の保険市場の成長および各社の保険事業規模の拡大を背景としている。実際、アジア各国の生命保険市場をみると、各国の生命保険収入保険料は2015年も高い成長率を継続していた4(図表-4)。
図表-4  アジア各国の生保収入保険料の2015年の成長率(前年比、現地通貨ベース)
ASEANの新興国と中国・インドでは、2015年の生命保険収入保険料が前年比2桁の高い成長率であった。これらの国々では、依然として国民一人当たりの生命保険料やGDP対比の生命保険料などでみる生命保険普及度が低く、今後も市場の成長余力が大きい。

また、生命保険普及度が欧米と比べても高水準にあるNIEs4カ国(香港特別行政区、シンガポール、韓国、台湾)についても、2015年の生命保険収入保険料は高い成長率を維持した。高齢化が進むNIEs4カ国では、年金など退職準備関連商品、医療保険への関心が増しており、加えて、所得水準の高まりを受け、貯蓄・投資型商品に対するニーズも強いとみられる。
 
 
4 平賀 富一、「アジア生命保険市場の動向・展望と重要点」 ニッセイ基礎研究所、保険・年金フォーカス2016/7/19
Xでシェアする Facebookでシェアする

増宮 守

研究・専門分野

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【【アジア・新興国】不動産投資家として存在感を増すアジアの保険会社~台湾、韓国に続き、中国本土の保険会社も不動産投資を本格化~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

【アジア・新興国】不動産投資家として存在感を増すアジアの保険会社~台湾、韓国に続き、中国本土の保険会社も不動産投資を本格化~のレポート Topへ