2016年08月23日

少額短期保険について-制度創設から10年間の成長

小林 雅史

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2――少額短期保険の現状

1少額短期保険業者、募集人
少額短期保険業者は、2013年度77社、2014年度82社、2015年度85社と、新規設立による増加が続いている(いずれも3月末時点)。

2016年度も、4月1日健康年齢少額短期保険、4月21日マスト少額短期保険の開業が続き、6月14日現在で、少額短期保険業者は87社になった。

87社の内訳を登録先の財務局別に見ると、北海道財務局に2、東北財務局に6、関東財務局に60、東海財務局に1、近畿財務局に9、中国財務局に2、四国財務局に2、福岡財務支局に4、沖縄総合事務局に1となっている。

また、少額短期保険は、少額短期保険募集人によって販売されているが、少額短期保険募集人数も2013年度139,416名、2015年度165,628名と増加している2
 
2|少額短期保険の商品
生保会社・損保会社においては、同一の会社で生命保険と損害保険は併売できない(子会社方式を除く)が、少額短期保険会社は最高保険金額・保険期間が制限3されているものの、生命保険と損害保険の併売が可能である。

少額短期保険会社が販売する商品は、
 ・火災や風水害などによる家財の損失を補償する「家財保険」(損害保険)
 ・死亡保障や入院保障などの「生保・医療保険」(生命保険)
 ・ペットの通院・入院・手術などを補償する「ペット保険」(損害保険)
 ・地震や遭難などにより発生する費用を補償するなどの「費用・その他保険」(損害保険)
に大別されている。

特徴的な商品としては、家財保険では、1人暮らしの方が自宅で死亡する孤独死の増加を受け、入居者の孤独死に伴う諸費用の発生に備える保険(アイアル少額短期保険「無縁社会のお守り」、アクア少額短期保険「スイルキーパー」、e-net少額短期保険「re-room」など)がある。

孤独死保険の補償としては、清掃費用や修復費用などを補償する原状回復費用保険金や、修繕期間中の家賃を補償する家賃損害保険金があり、家主向け(原状回復費用や家賃を補償)のタイプと、賃貸人向け(原状回復費用を補償)のタイプがある。

こうした孤独死保険は、少額短期保険会社に加え、損保会社においても同様の商品を販売するに至っている4

生命・医療保険では、糖尿病患者向け医療保険(エクセルエイド少額短期保険)、知的障がい者向け保険(ぜんち共済)、外国人向け保険(ビバビーダメディカルライフ)、不妊治療中でも加入できる医療保険(アイアル少額短期保険、エイ・ワン少額短期保険)などのほか、前述の健康年齢少額短期保険が、2016年6月、健康診断結果12項目を使用して算出された健康年齢(毎年見直し)で加入できる健康年齢連動型医療保険を発売した。

ペット保険は、ペットの治療費の一定割合(50~100%)を補償する保険で、火葬費用を補償するタイプもある。

費用・その他保険では、弁護士費用保険(プリベント少額短期保険、ジャパン少額短期保険)、遭難時の捜索・救助費用を補償するレスキュー費用保険(日本費用補償少額短期保険)、病気やけが・交通機関の遅延などでイベントに参加できなくなった場合のチケット代金を補償する不使用チケット費用補償保険(チケットガード少額短期保険)、入院や自然災害等により結婚式を中止した場合の費用などを補償する結婚式総合保険(株式会社アソシア)などがある5

2015年度は、家財保険を販売する会社が38社、生保・医療保険を販売する会社が32社、ペット保険を販売する会社が9社、費用・その他保険を販売する会社が6社となっている。
 
3|少額短期保険の保有契約の動向
保有契約の動向を見ると、2015年度保有契約は638万件に達し、うち家財保険が9割近くを占め、生保・医療保険が5.0%、ペット保険が4.4%、費用・その他保険が2.7%となっている。

2013年から2015年の推移を見ると、ペット保険の保有契約が引き続き順調に増加する一方で(2014年の対前年増加率は+22.2%、2015年は+27.3%)、費用保険その他も大きく増加している(2014年の対前年増加率は+28.6%、2015年は+88.9%)。

販売チャネルとしては、代理店がメインであり、家財・賠責保険では、不動産業者が代理店となるなど、提供する保障と関連が深いサービス提供事業者が代理店となっているケースが多い。
このほか、インターネットによる販売を行っている会社も多い。
(表)最近3年間の少額短期保険の保有契約の動向
 
2  「少額短期保険業者登録一覧」(2016年6月14日現在)、金融庁ホームページ、「2015年度 少額短期保険業界の決算概況について」、2016年7月8日、日本少額短期保険協会ホームページ。
3  最高保険金額は、疾病死亡:300 万円、傷害死亡:600 万円、疾病・傷害による入院給付金等:80 万円、損害保険:1000 万円など、保険期間は、損害保険は2年、生命保険・医療保険は1年。
4  「業界初、 少子高齢化に対応した火災保険の販売開始について」、2015年6月29日、三井住友海上火災保険・あいおいニッセイ同和損害保険ホームページ、「アパート・マンション等の個人オーナー向け『家主ダイレクト』の販売開始について」、2016年4月26日、東京海上日動火災ホームページ。
5  「少額短期保険ガイドブック 各社商品一覧」(2016年7月29日現在)、日本少額短期保険協会ホームページ。
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