2016年07月19日

英国のPRA(健全性規制機構)による最近の規制対応の動き-ソルベンシーIIへの対応-

中村 亮一

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4―内部モデルの変更

PRAは、5月5日に「ソルベンシーII:英国の保険会社によって使用される内部モデルに対する変更」についてのCPを公表した。コンサルテーション期間は8月5日までとなっている。

1|内部モデルとは
ソルベンシーIIにおける必要資本を表すSCR(Solvency Capital Requirement:ソルベンシー資本要件)の算出については、標準的な算式が定められているが、保険会社のリスク管理の高度化を促すために、監督当局の承認を要件に、各保険会社・グループ独自の内部モデル(部分的な適用を含む)の使用も認められている。

PRAは、2015年12月に、英国の19の生命保険会社に対して、内部モデル(部分内部モデルを含む)の使用を承認したと発表している。これは、他のEU諸国と比較して、かなり多い会社数となっている。ただし、これに留まらずに、さらに第2弾として、今後多くの会社が内部モデルの申請を行う意向を有しているようである。

2|CPの概要
このCPでは、PRAが、ソルベンシーIIの下で承認されている内部モデルの範囲に対する内部モデルの変更と拡張に関連して、保険会社とロイズに対するPRAの期待を設定するSS案を提案している。
このCPは、ソルベンシーIIの下での内部モデルの承認を得た保険会社に関連している。また、将来的に内部モデルを使用するための承認を考えている英国の保険会社やEEAまたは非EEAグループの英国子会社にとって重要である可能性がある。

3|CPの提案の概要
このCPの提案は、(1)内部モデルへの変更、(2)内部モデルを変更するためのポリシーの変更、(3)内部モデルの範囲の拡張、に関係しての会社に対するPRAの期待を含んでいる。

具体的には、モデル変更の申請の前と間での会社に対するPRAの期待、会社のモデル変更の申請の品質へのPRAの期待及びPRAがモデル変更の申請で提供されることを想定している情報についてのPRAの期待を説明している。
 

5―内部モデル使用会社に対するモデルのドリフトと標準式SCR報告のモニタリング

5―内部モデル使用会社に対するモデルのドリフトと標準式SCR報告のモニタリング

PRAは、5月25日に「ソルベンシーII:承認された内部モデルを持つ会社のためのモデルドリフトと標準式SCR報告のモニタリング」に関するCPを公表した。この中で、PRAは標準式による数値を内部モデルのベンチマークとすることを提案している。なお、コンサルテーション期間は8月17日までとなっている。

1|CPの概要
このCPでは、PRAが、SCR算出のために承認された内部モデルを有する会社に関して、モデルドリフトの監視や期待に対するPRAのアプローチを設定するSSを提案している。

モデルドリフトの監視に対するPRAの提案アプローチの一環として、SS案は、承認された内部モデルを持つ会社は、毎年標準式SCR情報を報告しなければならない、という期待を設定している。テンプレートは、PRAが、情報を提供する会社にとってよりシンプルになるように、検討している協議の一部として提供される。

CPは、内部モデルによる単独のSCRを計算する承認を得ているソルベンシーII対象の全てのPRAによって規制される単独及び再保険会社(単独のSCRがグループ内部モデルによって算出される会社を含む)、ロイズの各シンジケート及びロイズの内部モデルのアウトプットの点においてロイズに関連している。PRAは、グループレベルでの情報を要求することができ、会社はこの要求を監督コンタクトを介して通知されることになる。

2|CPの背景
ソルベンシーII指令は、関連する場合に応じて、監督当局によって承認されている内部モデルを用いてSCRを計算する、という規定を含んでいる。これは、モデルが時間をかけて進化するにつれて、資本水準が下方にドリフトし、システムにおけるリスクのレベルを適切に反映することに失敗する、というリスクを生み出すことになるかもしれない。PRAは、保険業界全体のために、個々の会社のレベルで、このリスクを監視するためのアプローチを提案している。

これらの提案は、PRA SS25/15「ソルベンシーII:規制当局への報告、内部モデルのアウトプット」と合わせて読まれる必要がある。このCPに定められた提案は、PRAが、内部モデルの外部にある措置に対して、内部モデルの結果の変化を監視することを可能にする。

3|CPの提案の概要
提案されたSSの目的は、PRAに対して標準式SCR計算の結果を報告する上において、内部モデル使用会社への期待を設定することにある。PRAは、潜在的なモデルのドリフトを監視するために、この情報を使用することを提案している。これは、リスクの客観的な尺度に対する内部モデルSCRの監視が含まれている。時間の経過とともに変化する可能性があるリスクの測定には、標準式SCR、プレ・コリドー最低資本要件、正味収入保険料と最良推定負債が含まれる。

PRAは、モデル承認の時点からのモデルドリフト率を計算し、リスク・プロファイルの変化又は主要なモデル変更の結果として、再構築することを提案している。このアプローチは、いかなるドリフトも、一貫して識別され、時間をかけてモニターされていることを保証する。

PRAは、モデルのドリフト率の変化に対応して、いかなる自動的な監督アクションも意図していない。ただし、変更は、そのような変更の理由を調査するために、監督上のレビューにつながる可能性がある。

保険会社は、標準式SCR計算をモデルドリフト監視アプローチの一部として使用することが著しく不適当であると主張することができる。その場合には、会社は別のアプローチを提案することを促されることになる。
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中村 亮一

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