2016年03月17日

【3月米FOMC】予想通り、政策金利据え置き。成長率、物価見通しを下方修正

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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4.会見の主なポイント

記者会見の主な内容は以下の通り。
  • 政策金利維持の理由
    • 12月会合から経済活動、労働市場、物価に対する基本的な見通しに大きな変更はない
    • しかしながら、世界経済や金融情勢がリスクであり、これらの要因を背景に政策金利を維持するという慎重な判断をした。
    • 注意深く金融緩和解除を行うことで、海外からのリスクがある中でも労働市場の回復が持続するか確認することができる。
 
  • 今後の金融政策
    • FOMC参加者の政策金利見通しが下方修正された理由として、12月時点で想定していた経済状況を実現するために必要な金利水準が幾分低くなったことが挙がられる。
    • (4月会合での利上げの可能性について)これまで繰り返してきた通り、追加利上げの判断は毎回行うため、可能性はある。6週間と短い期間だが、今後入手する経済指標で判断する。
    • 声明でも指摘した通り、FF金利の緩やかな上昇しか正当化しない形で経済状況が進むと予想している。
    • マイナス金利は、検討や討論する議題ではない。委員会は景気が回復し、物価が上昇すると想定しており、政策金利は時間をかけて緩やかに引き上げられると考えているからだ。
 
  • インフレ
    • PCE(個人消費支出)価格指数は、1月に前年比1.25%上昇したが、これは14年末にエネルギー価格が急落したためだ。これまでのエネルギー価格下落とドル高は今後も引き続き消費者物価を押下げるとみられる。
    • しかしながら、これらの一時的な要因が剥落してくれば、労働市場の更なる回復を背景に委員会は今後2~3年の内に2%まで物価が上昇すると見込んでいる。
 
  • その他
    • (声明でリスクバランスの表記が外れた理由について)委員会はリスクが依然として残っているものの、ここ数週間で確実に減少したと考えている。一方、リスクバランスが下向きであるという結論に至っていないため、下向きと表現することを避けた。委員の中では中立との見方と下向きとの見方に分かれている。
    • (原油安が消費に繋がらない理由)消費に与える影響は様々で評価が難しい。原油安が消費増加に結びついていないと断定的に言える結論に達していない。原油価格下落から想定されるほど、消費は強くなっていない。原油価格が低水準に留まることで今後緩やかに消費が喚起される可能性はある。

5.FOMC参加者の見通し

FOMC参加者(FRBメンバーと地区連銀総裁の17名 )の経済見通しは(図表1)の通りである。前回(15年12月16日)公表されたものと比較すると、16年および17年の成長率見通しが下方修正されたほか、16年の物価見通しも下方修正された。一方、失業率は16年から18年の見通しおよび長期目標水準について上方修正(失業率は低下)された。とくに失業率は18年にかけて長期目標とする水準を下回る失業率の改善が持続するとの見方が示された。
 
(図表1)FOMC参加者の経済見通し
(図表2)政策金利見通し(年末時点) 最後に政策金利の見通し(中央値)は、16年(1.375%→0.875%)と、17年(2.375→1.875%)が前回から0.5%ポイント引き下げられた。この結果、政策金利引き上げ幅は前回の年4回(1.0%ポイント)から年2回(0.5%ポイント)と引き下げられる一方、17年の年4回(1.0%ポイント)は維持された。

さらに、18年と長期見通しも前回から0.25%ポイント引き下げられた。
 
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2016年03月17日「経済・金融フラッシュ」)

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