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- 米国経済の見通し-個人消費主導の景気回復持続も、懸念される資本市場の実体経済への影響
2016年03月09日
2.実体経済の動向
(個人消費)労働市場の回復が消費を下支え、注目される資本市場の動向
労働市場は、回復基調が持続している。雇用者数は10-12月期の増加ペースが月間平均28.2万人に加速した後、16年に入ってからも月間20万人超の順調なペースで増加している。また、失業率も低下基調が持続しており、足元ではFRBが長期目標とする4.9%まで低下している(図表7)。
さらに、これまで回復がもたついていた労働参加率1が15年9月を底に回復基調となっているほか、時間当たり賃金についても、前年同月比+2%程度で停滞していた昨年の水準から切りあがってきており、労働市場の改善がこれまでの「量」だけでなく漸く「質」まで拡がっていることが確認できる(図表8)。このため、消費の原資となる可処分所得は今後も底堅い伸びが予想される。また、ガソリン価格の下落など、個人消費を取り巻く環境は引き続き良好となっており、個人消費は今後も米経済の牽引役として期待できよう。
労働市場は、回復基調が持続している。雇用者数は10-12月期の増加ペースが月間平均28.2万人に加速した後、16年に入ってからも月間20万人超の順調なペースで増加している。また、失業率も低下基調が持続しており、足元ではFRBが長期目標とする4.9%まで低下している(図表7)。
さらに、これまで回復がもたついていた労働参加率1が15年9月を底に回復基調となっているほか、時間当たり賃金についても、前年同月比+2%程度で停滞していた昨年の水準から切りあがってきており、労働市場の改善がこれまでの「量」だけでなく漸く「質」まで拡がっていることが確認できる(図表8)。このため、消費の原資となる可処分所得は今後も底堅い伸びが予想される。また、ガソリン価格の下落など、個人消費を取り巻く環境は引き続き良好となっており、個人消費は今後も米経済の牽引役として期待できよう。
1 生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
(設備投資)原油安、ドル高が重石。今後、原油安に伴う設備投資削減は緩やかに解消へ
原油価格の下落に伴い、資源関連の建設投資は10-12月期も前期比年率▲39.4%と4四半期連続の減少となったほか、民間設備投資を▲1.6%ポイント押下げた(図表10)。また、米ドル高に伴いISM製造業指数が拡大と縮小の境となる50を15年10月以来5ヵ月連続で下回るなど、製造業でドル高の影響が顕在化している(図表11)。さらに、これまで比較的堅調であったISM非製造業指数についても、新規輸出受注の悪化などを通じて低下基調が強まっており、非製造業の一部でもドル高の影響がでているとみられる。このように原油安や米ドル高は民間設備投資に対して重石となっていることが分かる。
原油価格の下落に伴い、資源関連の建設投資は10-12月期も前期比年率▲39.4%と4四半期連続の減少となったほか、民間設備投資を▲1.6%ポイント押下げた(図表10)。また、米ドル高に伴いISM製造業指数が拡大と縮小の境となる50を15年10月以来5ヵ月連続で下回るなど、製造業でドル高の影響が顕在化している(図表11)。さらに、これまで比較的堅調であったISM非製造業指数についても、新規輸出受注の悪化などを通じて低下基調が強まっており、非製造業の一部でもドル高の影響がでているとみられる。このように原油安や米ドル高は民間設備投資に対して重石となっていることが分かる。
次に、住宅販売(季調済、3ヶ月移動平均)は、新築住宅販売が年率50万戸、中古住宅販売が530万戸件と、ともに高い水準を維持しており、住宅販売の回復基調が持続している(図表14)。一方、建設業者の景況感を示す住宅市場指数は、依然として高い水準を維持しているものの、15年10月をピークに回復に足踏みがみられる(図表15)。住宅販売の現況や客足の評価は足元で悪化しているものの、今後6ヵ月先の新築住宅販売見通しが小幅に改善しており、住宅販売に強気の見方を維持している。
住宅市場は、雇用不安の後退に加え、住宅ローン金利が低位で推移しており、住宅市場を取り巻く環境は依然として良好である。今後の追加利上げにより、住宅市場の伸び鈍化が見込まれるものの、利上げペースは緩やかに留まるとみられることから、住宅市場の回復基調は持続しよう。
住宅市場は、雇用不安の後退に加え、住宅ローン金利が低位で推移しており、住宅市場を取り巻く環境は依然として良好である。今後の追加利上げにより、住宅市場の伸び鈍化が見込まれるものの、利上げペースは緩やかに留まるとみられることから、住宅市場の回復基調は持続しよう。
(政府支出、財政収支)17年度予算は既に大枠合意、注目される来年度以降の財政スタンス
2015年超党派予算法2により、既に17年度の予算枠や17年3月まで債務上限を適用しないことが決まっている。このため、17年度は予算審議の縺れからの一時的な政府閉鎖や、債務上限抵触に伴う米国債デフォルトの可能性は低い。また、17年度も引き続き政府支出が米国経済に与える影響は限定的とみられる。
2月に公表されたオバマ大統領最後の予算案では、大規模金融機関や石油業者に対する課税強化などが盛り込まれ、歳入増加を図ることで今後10年間に2.9兆ドルの財政赤字削減を目指している。この結果、超党派予算法が想定していない18年度以降についても予算管理法が定める強制歳出削減を上回る歳出増加を提案している(図表16)。
一方、債務残高(GDP比)は、現行法を前提にしたベースライン予測では今後10年間に90%近くまで増加が見込まれるのに対して、大統領予算案では足元の70%台の水準で安定させることを目指している(図表17)。
もっとも、オバマ大統領の任期が1年を切る中で大幅な税制改正などが実現する可能性が低いため、大統領予算案が提案通り成立する可能性は低い。また、11月の大統領選挙で共和党から大統領が選出される場合には、財政政策が大幅に変更される可能性が高いため、実体経済に与える影響は評価し難い。いずれにしろ、政策の予見可能性は低下するため、個人消費や企業の意思決定に与える影響が懸念される。
2015年超党派予算法2により、既に17年度の予算枠や17年3月まで債務上限を適用しないことが決まっている。このため、17年度は予算審議の縺れからの一時的な政府閉鎖や、債務上限抵触に伴う米国債デフォルトの可能性は低い。また、17年度も引き続き政府支出が米国経済に与える影響は限定的とみられる。
2月に公表されたオバマ大統領最後の予算案では、大規模金融機関や石油業者に対する課税強化などが盛り込まれ、歳入増加を図ることで今後10年間に2.9兆ドルの財政赤字削減を目指している。この結果、超党派予算法が想定していない18年度以降についても予算管理法が定める強制歳出削減を上回る歳出増加を提案している(図表16)。
一方、債務残高(GDP比)は、現行法を前提にしたベースライン予測では今後10年間に90%近くまで増加が見込まれるのに対して、大統領予算案では足元の70%台の水準で安定させることを目指している(図表17)。
もっとも、オバマ大統領の任期が1年を切る中で大幅な税制改正などが実現する可能性が低いため、大統領予算案が提案通り成立する可能性は低い。また、11月の大統領選挙で共和党から大統領が選出される場合には、財政政策が大幅に変更される可能性が高いため、実体経済に与える影響は評価し難い。いずれにしろ、政策の予見可能性は低下するため、個人消費や企業の意思決定に与える影響が懸念される。
2 2015年超党派予算法成立の経緯や内容については、Weeklyエコノミスト・レター(2015年11月20日)「2015 年超党派予算法が成立-17年の新政権発足まで政府機関閉鎖、米国債デフォルトリスクは低下」http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=51508を参照下さい。
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