2016年01月20日

韓国の保険会社の海外進出の現状や今後の課題

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

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損害保険会社の場合は利益の規模がそれほど大きくはないが、生命保険会社に比べると黒字が出ている会社が多い。2014年上半期の海外での営業利益を見ると、サムスン火災(1,922万ドル)と東部火災(308万ドル)、そして現代海上(171万ドル)とメリッツ損保(5万ドル)が黒字を出した。一方、2013年上半期に黒字を出していたLIG損保はアメリカのマンハッタンのアパート崩壊やカリフォルニアのアパート火災などの大型事故の影響を受け2,298万ドルの赤字に転落した。また、再保険会社のコリアンリーも2013年上半期の1,201万ドルの黒字から2014年上半期には155万ドルの赤字決算になった(表4)。
表4海外に進出した韓国の損害保険会社の損益状況

4――おわりに

2000年代中盤以降、韓国の保険会社の海外営業が加速化しているものの、進出国における保険市場の占有率や利益は未だに低い状態が続いている。韓国の製造業がアジア諸国で大きな成果を挙げていることとは対照的だと言える。韓国の保険会社は、なぜ海外で期待した通りの成果を挙げていないだろうか。その原因としては、外国企業に対する目に見えない差別、韓国国内とは異なる市場環境、自国企業に対する強い選好度2、欧米の既進出企業に対する強い信頼感、商品企画の現地化の失敗、韓国の保険会社に対する低い認知度、製造業と比べて信頼を得るためにより長い時間がかかる点などが考えられる。

アジア各国の生命保険市場は、今後さらなる拡大が見込まれており、先行者の欧米企業と後発走者の日本、韓国、アセアン企業等との厳しい競合が予想される。韓国の保険会社がアジアの保険市場で目標通りの成果を挙げるためには、上記に指摘した課題をどのように解決するのかが今後の鍵を握ると言えるだろう。特に、先行者の欧米企業の事例を参考すると、ブランド力や信頼度を高めることや商品に対する消費者ニーズを把握するのが大事である。今後、韓国の保険会社が、どのような戦略で海外の保険市場を開拓していくのか引き続き注目していきたい。
 
2 2013年における中国の保険市場の占有率は、中国系の保険会社が生保94.4%、損保98.7%を占めており、2009年の中国系の保険会社の占有率(生保94.8%、損保98.9%)と大きく変わっていない。
付表1韓国における生命保険会社の海外店舗(現地法人や支店)の現状
付表2 韓国における損害保険会社の海外店舗(現地法人や支店)の現状
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生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
    独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

    ・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
    ・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
    ・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
    ・2021年~ 専修大学非常勤講師
    ・2021年~ 日本大学非常勤講師
    ・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
    ・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
    ・2024年~ 関東学院大学非常勤講師

    ・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
           東アジア経済経営学会理事
    ・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

    【加入団体等】
    ・日本経済学会
    ・日本労務学会
    ・社会政策学会
    ・日本労使関係研究協会
    ・東アジア経済経営学会
    ・現代韓国朝鮮学会
    ・韓国人事管理学会
    ・博士(慶應義塾大学、商学)

(2016年01月20日「基礎研レター」)

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