2015年09月25日

消費者物価(全国15年8月)~コアCPI上昇率は2年4ヵ月ぶりのマイナスも、物価上昇の裾野は広がる

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・コアCPI上昇率は13年4月以来のマイナスに
・物価上昇品目数の割合は引き続き6割を上回る
・全国のコアCPIは15年度末までには再びプラスへ

■要旨

総務省が9月25日に公表した消費者物価指数によると、15年8月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比▲0.1%(7月:同0.0%)となり、13年4月以来2年4ヵ月ぶりのマイナスとなった。一方、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合は前年比0.8%(7月:同0.6%)と上昇幅が拡大し、総合は前年比0.2%(7月:同0.2%)と上昇を維持した。

消費者物価指数の調査対象524品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、8月の上昇品目数は339品目(7月は344品目)、下落品目数は131品目(7月は133品目)となった。上昇品目数は前月から若干減少したが、上昇品目数の割合は64.7%(7月は65.6%)と引き続き60%を上回っている。下落品目数の割合は25.0%(7月は25.4%)となり、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は39.7%(7月は40.3%)であった。
食料品の値上がりが目立っているが、トイレットペーパー、ポリ袋などの日用品、宿泊料、テーマパーク入場料、月謝類などのサービスでも幅広い品目で値上げが行われている。コアCPI上昇率は前年比でマイナスとなったが、品目数でみれば上昇品目数が下落品目数を大きく上回っており、物価上昇の裾野は広がっている。

エネルギー価格の下落幅は今後さらに拡大することが見込まれるため、全国のコアCPI上昇率は当面マイナス圏で推移する可能性が高い。
一方、かつてに比べて企業の値上げに対する抵抗感は小さくなっており、円安に伴う原材料価格の上昇に対応した価格転嫁はすでに幅広い品目で行われている。コアCPI上昇率がマイナスに転じる中で、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合(いわゆるコアコアCPI)が2月の前年比0.3%(消費税の影響を除く)から8月に同0.8%まで上昇幅が拡大していることは、エネルギー以外の物価上昇圧力の強さを示したものと言える。現時点では、原油価格(ドバイ)が1バレル=50ドル程度まで戻ることを前提として、コアCPI上昇率は15年度末までには再びプラスに転じると予想している。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2015年09月25日「経済・金融フラッシュ」)

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