2015年07月09日

6月マネー統計~勢いを増す投資信託

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■見出し

・貸出動向: 設備投資の動向がカギに
・マネタリーベース: 実態的にはややペースダウン
・マネーストック: 特殊要因剥落で鈍化、投資信託は勢いを増す

■要旨

6月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.6%と前月から僅かに縮小した。ただし、これまで牽引役となってきたM&A向けや不動産向けは引き続き堅調とのことであり、中小企業向けが前年比プラスを維持するなど裾野の広がりも確認できる。銀行貸出の基調としての緩やかな増勢には特段の変化はないとみられる。今後は、設備投資の動向が注目される。日銀短観における15年度設備投資計画は近年まれに見る大幅上方修正となった。今後、実際に設備投資が活発化し、資金需要に結びつくかかが、銀行貸出の増勢を左右する重要な要素となりそうだ。

日銀による資金供給量を示すマネタリーベースの6月平均残高は313.1兆円、前年比で34.2%の増加となった。前年比での伸び率は前月からやや縮小している。金融政策との関係では、現行の金融政策目標におけるマネタリーベース増加ペースは単純計算で月当たり6.7兆円増だが、季節調整済みのマネタリーベース平均残高は前月差4.0兆円増と、目標達成ペースを下回っている。この結果、季節調整済みのマネタリーベース平均残高は、1-6月平均で見ても月6.5兆円の増加と、目標達成ペースをやや下回ったが、目標との乖離は今のところ小幅であり、まだ十分に挽回可能な状況とみられる。

6月のマネーストック統計によると、市中通貨量の代表的指標であるM2平均残高の伸び率は前年比3.8%、M3は同3.1%と、それぞれ前月から伸びが鈍化した。5月は予算成立遅れに伴う社会保障費支払いのずれ込みや株価上昇に伴う個人投資家の株式売却などが伸び率拡大に働いたが、6月は個人投資家が株式を買い越したこともあり、特殊要因が剥落した影響で伸び率が鈍化したようだ。リスク性資産等を含めた広義流動性の伸び率も前年比4.3%と縮小したが、M2やM3を上回る。残高が大きい金銭の信託が高めの伸びを維持したほか、投資信託(元本ベース)の伸び率拡大が寄与している。投資信託の残高は過去最高を更新しているうえ、伸び率も2008年2月以来の15%台となるなど勢いを増している。

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2015年07月09日「経済・金融フラッシュ」)

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