2015年06月26日

消費者物価(全国15年5月)~コアCPI上昇率はゼロ近傍で推移も、幅広い品目で値上げが続く

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・コアCPI上昇率はゼロ近傍の推移が続く
・物価上昇品目数はさらに増加
・コアCPIは夏場にかけて下落も、年末までには再びプラスへ


■要旨

総務省が6月26日に公表した消費者物価指数によると、15年5月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.1%(4月:同0.3%)となり、上昇率は前月から0.2ポイント縮小した。
消費税率の引き上げによって4月のコアCPIは0.3%押し上げられていたため(5月はほぼゼロ%)、その影響を除くと上昇率は0.1ポイント拡大したことになる。消費税の影響を除いたコアCPI上昇率は15年入り後、ゼロ近傍の動きが続いている。
コアCPIの内訳をみると、エネルギー価格は4月の前年比▲3.4%から同▲6.0%へとマイナス幅が拡大した。ただし、電気代、ガス代の下落幅拡大のほとんどは消費増税の影響一巡によるものである。一方、食料(生鮮食品を除く)の上昇率は3月の前年比0.9%から4月に同1.5%へと大きく高まった後、5月も同1.6%と高止まりした(消費税の影響を除くベース)。

消費者物価指数の調査対象524品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、5月の上昇品目数は332品目(4月は319品目)、下落品目数は145品目(4月は164品目)となり、上昇品目数が前月から増加した 。上昇品目数の割合は63.4%(4月は60.9%)、下落品目数の割合は27.7%(4月は31.3%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は35.7%(4月は29.6%)であった。
食料以外でも衣料、布団、トイレットペーパー、テーマパーク入場料、月謝類など、幅広い品目で値上げが行われている。コアCPI上昇率は前年比でゼロ近傍の動きが続いているが、品目数でみれば上昇品目数が下落品目数を大きく上回っており、基調的な物価上昇圧力の強さを示している。

電気代、ガス代の値下げはこれから本格化するため、夏場にかけてエネルギー価格の下落率はさらに拡大し、コアCPI上昇率に対する寄与度は▲1%程度となることが見込まれる。このため、コアCPI上昇率は7月にはマイナスに転じることが予想される。
ただし、かつてに比べて企業の値上げに対する抵抗感は小さくなっており、原材料価格の上昇に対応した価格転嫁はすでに幅広い品目で行われている。物価上昇品目数が下落品目数を大きく上回っていることは、基調として物価下落が加速する状況にはないことを示したものといえよう。秋以降はエネルギー価格の下落率が縮小に向かうため、コアCPI上昇率は年末までは再びプラスとなり、16年度入り後には1%台まで伸びを高めることが予想される。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2015年06月26日「経済・金融フラッシュ」)

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