2015年05月22日

ECBの量的緩和で何が変わったか~自律的回復の芽生え、ギリシャ問題への耐性~

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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  1. 欧州中央銀行(ECB)が、資産買入れプログラムを、国債等を含む月600億ユーロに拡大することを決めてから4カ月、実際に買入れを開始してから2カ月半が経過した。
  2. ECBの資産買入れは、これまでのところ目標通りのペースで行われ、バランス・シートは「2年間で1兆ユーロ」という目標に向け着実に拡大している。
  3. 量的緩和は、その前段階からユーロ安、長期金利低下、株高をもたらしたが、4月下旬以降、反転し、イールド・カーブは急激にベア・スティープ化した。
  4. 基調変化の主な要因は、ユーロ圏の景気・インフレ指標の改善にある。1~3月期のユーロ圏は原油安、ユーロ安、低金利の恩恵で、停滞が続いた仏伊も含めて好転、インフレ率も4月にはマイナスを脱した。原油価格やユーロ相場の動きからは、今後、プラス圏で伸びを高めることが予想され、インフレ期待も持ち直しつつある。
  5. ユーロ圏経済は、緩和的な金融環境と財政緊縮圧力の後退で潜在成長率を上回るペースでの回復が続く見通しだが、GDPギャップは解消には至らず、域内の競争力の格差や構造的失業と投資不足の問題解決のためにも、ギリシャの偶発的デフォルトのリスクへの備えとしても金融緩和の継続は欠かせない。
  6. ECBが早期に量的緩和を打ち切る可能性は低く、財政面でも中立姿勢が維持される。ユーロ圏の長期金利が過去1カ月のようなペースで上昇し続けることは考え難い。
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経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

(2015年05月22日「Weekly エコノミスト・レター」)

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