2015年05月15日

米国労働市場の検証-利上げの条件とされる更なる労働市場の改善とは

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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【要旨】

  1. FRBは15年中の政策金利の引上げを目指し、これまで段階的に金融緩和政策の解除を実施している。FRBは、「物価の安定」に加えて、金融政策目標に「雇用の最大化」という労働市場の項目が入っているところに特徴がある。このため、FRBの意思決定においては、物価動向のみならず、労働市場の動向が重要な鍵を握っている。
  2. 米国労働市場は、3月に雇用者数の増加ペースが大幅に鈍化したものの、4月には再び以前のペースに復したことから、雇用者数などの「量」を中心に回復基調が持続しているとみられる。もっとも、イエレン議長が労働市場の「質」改善を判断する際に重視しているとされる指標では、改善傾向を示すものがある一方、改善が滞っている指標もあり、労働市場の「質」の改善は一様でないことが分かる。
  3. とくに労働参加率と賃金上昇率は改善が滞っている。労働参加率は高齢化などの人口動態変化などの構造要因も影響することから慎重に判断する必要はあるものの、足元の状況は構造要因だけで説明できる水準を大きく下回っている。さらに、賃金上昇率も労働市場の「量」の回復とは対照的に回復が滞っている。
  4. FRBは政策金利引上げの条件として、労働市場について更なる改善が必要であることを明示している。改善が滞っている指標についてどのように評価するのか注目される。
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2015年05月15日「Weekly エコノミスト・レター」)

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