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“パラリンピック”は何を残すか-人口減少・超高齢社会に向けた“レガシー”の創造を!
土堤内 昭雄
皆さんはパラリンピックの歴史についてご存知だろうか。日本パラリンピック委員会ホームページ*によると、1948年、ロンドン郊外の病院で行われた車いす患者によるアーチェリー大会がその原点とされている。以降、毎年開催された同大会は、1952年に国際大会になり、1960年からはオリンピック開催国で五輪後に実施されることが決まり、同年のローマ大会が第1回パラリンピックになった。
1964年の東京オリンピック時に開催されたのが第2回パラリンピックで、1989年には国際パラリンピック委員会が設立された。1976年以降は脊椎損傷者に加えて視覚障害者も参加し、パラリンピックという呼称は、従来の対麻痺(ついまひ)者(paraplegia)のオリンピックから、類似(parallel)のオリンピックを意味するようになった。そして、今では世界最高レベルの障がい者スポーツ大会へと発展している。
近年のオリンピック開催で重視されるのが、“レガシー”の創造だ。オリンピック・レガシーとは、五輪開催都市や開催国が長期にわたり継承・享受できるオリンピックの社会的・経済的・文化的恩恵のことだ。64年の五輪では、その後の日本の高度経済成長を支えてきた新幹線や高速道路網などの都市インフラが大きなレガシーとなったが、“パラリンピック”はどんなレガシーを残したのだろう。
『挑戦者たち』編集長の伊藤数子さんは、年初のコラム**で、『50年前は日本と欧米では障がい者に対する考えが大きく異なっていた。64年の東京パラリンピックは、「障がいがあっても、仕事をして、家族を持つことができる」「車椅子でも街に遊びに行くことができる」など、障がい者への考えを大きく変えるきっかけとなるはずだったが、それを広く伝えられなかった。2020年東京パラリンピックは、障がい者や障がい者スポーツへの理解を深め、社会変革を起こす機会だ』と述べている。(要約は筆者)
日本でもノーマライゼーションの考え方が徐々に普及し、2000年以降、バリアフリーの街づくりが推進されてきた。鉄道駅へのアクセス性が向上し、車いすで電車を利用する人々も増え、障がい者も広く社会の中で活躍できる都市環境が整いつつある。それは、急速に高齢化が進む日本社会にとってとても重要だ。何故なら、障がい者が暮らしやすい街は高齢者にとっても暮らしやすい街だからだ。
日本は本格的な人口減少時代を迎えており、一人でも多くの人がその能力を発揮できる社会づくりが喫緊の課題である。障がい者がスポーツ分野はじめ様々な領域で活躍できる街づくりと社会意識の変革をもたらす2020年“パラリンピック”レガシーの創造は、将来の人口減少・超高齢社会における日本の普遍的課題に対する有効な解決策としても極めて重要になるのではないだろうか。
土堤内 昭雄
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(2015年04月14日「研究員の眼」)
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