2015年01月26日

貿易統計14年12月~10-12月期の外需寄与度は前期比0.2%程度のプラスに

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・貿易赤字の縮小が続く
・輸出は持ち直しの動きが明確に
・10-12月期の外需寄与度は前期比0.2%程度のプラスに


■要旨

財務省が1月26日に公表した貿易統計によると、14年12月の貿易収支は▲6,607億円の赤字となったが、赤字幅は市場予想(QUICK集計:▲7,351億円、当社予想は▲7,014億円)を下回った。輸出が前年比12.9%(11月:同4.9%)と1年ぶりに前年比で二桁の高い伸びとなる一方、輸入が前年比1.9%(11月:同▲1.6%)と輸出を大きく下回る伸びとなったため、貿易収支は前年に比べ6,460億円の大幅改善となった。
季節調整済の貿易収支は▲7,121億円の赤字となり、11月の▲8,325億円から赤字幅が縮小した。輸出が前月比2.0%(11月:同1.0%)と前月から伸びを高める一方、輸入が前月比0.1%(11月:同▲0.6%)と3ヵ月ぶりに増加したものの輸出の伸びを大きく下回った。
12月の貿易赤字(季節調整値)は直近のピークであった14年1月(▲17,742億円)から1兆円以上縮小したが、原油価格の急落は貿易統計にはまだ一部しか反映されていない。足もとの原油価格はWTI先物、ドバイ原油ともに1バレル=40ドル台半ばとなっているが、12月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=79.2ドル(当研究所による試算値)で、それよりも30ドル以上高い。通関ベースの原油価格は15年1月以降も大幅に下落し、貿易赤字の縮小傾向が続くだろう。なお、通関ベースの原油価格はすでに下落基調が明確となっているが、液化天然ガスの価格は現時点ではまだ高止まりしている。日本の天然ガスの調達価格が原油価格連動型の長期契約となっているため、市場価格の反映が遅れているためと考えられる。

10-12月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)で見ると、米国向けが前期比2.5%(7-9月期:同▲1.7%)、EU向けが前期比1.5%(7-9月期:同▲1.5%)、アジア向けが前期比3.1%(7-9月期:同1.7%)、全体では前期比2.4%(7-9月期:同0.9%)であった。海外経済は米国が好調を維持する一方、欧州、アジア経済は弱めの動きとなるなど全体として回復ペースは緩慢にとどまっているが、円安による押し上げ効果が顕在化することにより輸出はいずれの地域向けも持ち直しの動きが明確となりつつある。

12月までの貿易統計と11月までの国際収支統計の結果を踏まえて、2014年10-12月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出が前期比2%台前半の増加、輸入が前期比1%弱の増加となることが見込まれる。この結果、10-12月期の外需寄与度は前期比0.2%(年率1%程度)となり、7-9月期の同0.1%からプラス幅が拡大することが予想される。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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