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日本旅行業協会の2014年度「旅行統計」によると、2013年の日本からの海外旅行者数は1,747万人、訪日外国人旅行者数の約1.7倍だ。性別では、男性が全体の55.5%を占め、年代別では、40代が20.3%と最も多く、次いで30代が19.2%、60歳以上は18.9%となっている。最近5年間の変化をみると、60歳以上の男性の増加が大きい。高齢化が進展し、時間とお金に余裕のある団塊世代などシニア層の海外旅行が増えているためだろう。
私は今年の夏休み、トルコの西側を巡るグループツアーに参加した。バスによる長距離移動が多く、古代遺跡などを歩き回る2週間近い旅行は、体力的にキツイものの、退職したシニア層が中心だった。参加者に定年後の元気な過ごし方について聞いてみると、多くの人が『色々なことに興味・関心を持ち、積極的に外出し、社会や人との交流に努めることだ』と話していた。今後、体力のある元気なうちに海外旅行を楽しみたいという、団塊世代をはじめとするシニア層がますます増えるものと思われる。
近年では、海外旅行に行く前に、ネットで様々な情報を収集できる。また、グーグルのストリートビューを使えば、ほとんど世界中の風景を見ることも可能だ。旅行に行って既視感に襲われることもあるが、実は事前にバーチャルな映像を見ていたということもある。しかし、どんなにネットで事前検索をしても、リアルな体験には敵わない。旅先では、映像だけでなく、音や光、空気の温度や匂いなど人間の五感を通して膨大な情報が脳に送られ、それが新たな感動や価値観を生み出すからだ。
東浩紀著の『弱いつながり~検索ワードを探す旅』(幻冬舎、2014年7月)には、『ひとは観光客になると、ふだんは決して行かないようなところに行って、ふだんは決して出会わないひとに出会う』『自分の世界を拡げるノイズとして旅を利用する』、『ネットは人間が作った記号だけでできている。(中略)「表象不可能なもの」はそこには入らない』『大事なのは、まずは言葉にできないものを体験すること』など、ネットの限界性とリアルな体験の効用が述べられている。
また、現代は何でもネット検索できる時代だが、『ネットでは見たいものしか見ることができない』、『年齢を重ねると、情報収集のフィルターが目詰まりを起こし、新たな検索ワードを思いつかなくなる』とも書かれている。日常生活の思考の枠組みが固定化し発想が乏しくなる時、「旅」というリアルな体験は、自分の世界を拡げることに繋がる。それは、先入観や既成概念を超えて、頭を“柔らかく”するひとつの有効な方法になるのではないだろうか。
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