- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経営・ビジネス >
- 企業経営・産業政策 >
- 英国の郵政事業体ロイヤルメールの上場-組織分離による上場実施と郵便局体制維持の両立-
■要旨
昨年10月、世界最古の郵政事業体である英国ロイヤルメールの株式が上場され、注目を集めた。
英国では2006年に郵便市場が完全自由化され、独占の地位を失い競争にさらされる一方で、ユニバーサルサービス提供の義務を負うロイヤルメールの経営をどのように維持・回復させるか、国民の支持を受ける郵便局ネットワークを如何に守るかが時の政府に突きつけられた難題となった。
労働党政権による独立委員会(フーパー委員会)への検討依頼(2007年)、委員会報告(2008年フーパーレポート)、郵便サービス法案の議会審議と廃案(2009年)、連立政権への政権交代(2010年)、連立政権による依頼を受けた更新版フーパーレポートの提出(2010年)、連立政権による郵便サービス法案の提出(2010年)、郵便サービス法の成立(2011年)という流れを経て、ロイヤルメールの上場に向けた条件が整った。
2012年4月、それまで郵便事業会社ロイヤルメールの子会社の立場でグループに組み込まれていた郵便局会社を、同じ持株会社傘下の兄弟会社としてロイヤルメールと並び立つ立場に置き換える郵政事業グループの組織再編が実施された。これにより郵便事業会社を上場しても、郵便局会社については政府出資100%を継続することが可能となった。
ロイヤルメールの株式は2013年10月15日に上場された。上場に先立って行われた政府保有株売出しへの応募が人気を集め、上場後の株価も高騰する等、ロイヤルメール株式の上場は成功を収めた(ただし、現在は初値近辺にまで株価は下落している)。
英国では郵便局会社を郵便事業会社の上場から切り離すことにより、収益事業化することは難しいが国民に親しまれた社会的公器である郵便局を守りつつ、郵便事業会社の上場を果たすことを可能とした。自由競争による最適化を重視するというイメージが強い英国において、このような措置が執られたことは興味深い。
松岡 博司
研究・専門分野
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年03月28日
“ガソリン補助金”について改めて考える~メリデメは?トリガー条項との差は? -
2024年03月28日
健康無関心層へのアプローチ -
2024年03月28日
中国経済:景気指標の総点検(2024年春季号) -
2024年03月28日
高齢者就業への期待と課題(中国) -
2024年03月28日
中国における結婚前の財産分与から見た価値観の変化
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
-
2023年04月27日
News Release
【英国の郵政事業体ロイヤルメールの上場-組織分離による上場実施と郵便局体制維持の両立-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
英国の郵政事業体ロイヤルメールの上場-組織分離による上場実施と郵便局体制維持の両立-のレポート Topへ