2013年12月04日

【ブラジルGDP】成長鈍化、回復中だがリスクも多い

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.成長率は再び鈍化

ブラジルの地理統計院(IBGE)は12月3日、2013年7-9月期の国内総生産(GDP)を公表した。実質GDP成長率は前年同期比(原系列)で2.2%の増加となり、前期の+3.3%から減速した。また、前期比(季節調整済)の伸び率は▲0.5%と、大幅加速した前期(同+1.8%)から一転してマイナスとなった。


ブラジルの実質GDP成長率(支出側、原系列)/ブラジルの実質GDP成長率(供給側、前年同期比)



2.最悪期は脱したが、リスクは残る

7-9月期のGDPからは、成長率の鈍化が見られたが、内需の強さにはほとんど変化がなく、最悪期はすでに脱していると考えられる。むしろ、成長率押し下げの主因である輸入の増加は内需の高まりを示唆しているとも言える。加えて、これまで懸念材料だった高インフレも改善に向かっていることから、年前半に懸念された高インフレと景気低迷の並存というスタグフレーションのリスクは低下しつつあると見られる。

ただし、内需のうち投資が若干鈍化していること、また、輸出の伸び悩みが続く一方で、輸入が増加しているため、貿易収支や経常収支が悪化するリスクがあることなど、先行きの懸念材料も少なくない。貿易収支の悪化は、成長率の低下だけでなく、通貨下落への耐久力を弱くさせるという点でも注意したい。特に、今年は6月に大規模な政府への抗議デモが発生するなど、政治リスクにも注目が集まっている。そのため、米国での量的緩和策が開始された際に、再び資金流出圧力が強まり、再びレアル安や輸入インフレが発生するリスクは払拭できていない。

こうした状況を踏まえれば、ブラジル経済は回復基調にあり、スタグフレーションからの脱却は進みつつあると評価できるものの、先行きの懸念材料が残っている状況と言えるだろう。

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高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

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