コラム
2013年06月17日

「ビッグデータ」とプライバシー ~プライバシー保護に対する取組意識の向上と漏洩防止に向けた不断の取組~

山田 善志夫

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最近とみに「ビッグデータ」に関する報道を眼にすることが増えてきた。「ビッグデータ」の利活用によって、人や物、またお金の動きなどが「見える化」されるため、企業等は、新商品や新サービスの開発、また販売促進や顧客開拓に繋げることができるという。

5月21日付の日本経済新聞に、IC乗車券とポイントカードのデータを組み合せて販売促進に活用する事例が紹介されていた。この記事を読んだ時、私が居住している沿線での取組だったからかも知れないが、自分の私生活までもが覗かれているような感覚を覚えた。人には、絶対に「見える化」して欲しくないことや「見える化」してはいけないことがある。「ビッグデータ」の利活用は、やり方によっては、その一線を簡単に踏み越えてしまうのではないかという不安を抱いたのである。

全国の20~60代の男女1000人を対象とする日経リサーチ社のインターネット調査*1によれば、「ビッグデータの活用として企業や行政が個人情報を使うこと」に「反対」と「どちらかといえば反対」という回答が51.8%を占め、「賛成」と「どちらかといえば賛成」は約半分の26.2%に留まっている。私も含め、個人から見ると、「ビッグデータ」の利活用の際に、プライバシーや個人情報が守られるのかという不安はまだまだ根強く残っている。

一方、企業を対象とする野村総合研究所の調査*2によれば、「ビッグデータの活用を進めていく場合の問題・課題」について、「個人情報の取り扱いや情報漏えいなどのリスクに対する不安が大きい」(複数回答)は僅か15%で、「ビジネスとして具体的に何に活用するかが明確でない」の61%、「投資対効果の説明が難しい」の45%、「担当者のスキルが不足している」の45%に比べ低位に留まっている。

「ビッグデータ」を利活用する企業等も、データ解析担当者がアクセスできる情報を年齢や性別といった属性情報に限定する等、プライバシーや個人情報の保護の徹底に取り組んではいる。しかし、現時点での企業の意識は、プライバシーや個人情報の保護よりも、圧倒的に、今後「ビッグデータ」の利活用をどのように推進していくかということに向いていると言わざるをえない。

IT技術は日々急速に進歩しており、近い将来、匿名化された属性データであったとしても、複数のデータを組み合わせて分析することによって、個人を特定できるようになる可能性は極めて高い。「ビッグデータ」の利活用をより一層推進していくためには、プライバシーや個人情報の保護に対する取組意識の更なる向上と漏洩防止に向けた不断の取組が必要不可欠である。




 
*1  2013年5月実施。
*2  「ビッグデータの利活用に関するアンケート調査」(2012年7月~8月実施、売上高200億円以上の企業228社の回答)
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(2013年06月17日「研究員の眼」)

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