2013年04月17日

緩和の余韻が続く ~マーケット・カルテ5月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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4月前半の市場では、日銀新体制の大胆な金融緩和決定を受けて一気に円安ドル高・ユーロ高が進行した。一方、緩和策の直接の影響を受ける債券市場では日銀買入れの大幅増額・年限長期化のインパクトを消化できず、長期金利は乱高下することとなった。筆者は日銀の初回緩和策が市場の予想を超えるのは難しいと踏んでいたのだが、その内容や規模は予想を超え、“レジーム・チェンジ”を印象付けた。

足元の為替市場では中国の成長率低下やボストン爆弾事件の影響等でやや円高に振れたが、円の上値は重い。日銀の一手によって際立った日米金融政策の方向感の違いやインフレ期待への働きかけが息の長い円安材料として意識されているとみられる。またかねてよりの円安材料である本邦貿易赤字も収束の兆しが見えていない。従って、今後3ヵ月を見通した場合、強制歳出削減の影響などから米経済指標がいったん弱含み円高に振れる局面はあり得るものの、基調としての円安ドル高は続く可能性が高い。ユーロについては、域内経済の弱さや燻り続ける債務危機への懸念などから積極的に買う材料は見当たらない。従って、対ドルでは弱含むと見るが、円も同じく対ドルで下落することにより、ユーロ円では横ばい程度となるだろう。

長期金利は今しばらく緩和の影響を消化しきれず、波乱含みの展開が予想されるが、日銀も市場との対話を強化しており、いずれ沈静化するだろう。現状比でやや低い水準に押さえ込まれると見ている。

(執筆時点:2013/4/17)

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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