2012年12月28日

鉱工業生産12年11月~底入れを探る生産活動

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・鉱工業生産は2ヵ月ぶりの低下
・生産は年末から年明けにかけて底入れを探る展開へ

■introduction

経済産業省が12月28日に公表した鉱工業指数によると、12年11月の鉱工業生産指数は前月比▲1.7%と2ヵ月ぶりの低下となり、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲0.3%、当社予想は同▲0.5%)を大幅に下回った。出荷指数は前月比▲1.1%と3ヵ月連続の低下、在庫指数は前月比▲1.2%と4ヵ月連続の低下となった。
11月の生産を業種別に見ると、スマートフォン向けの需要拡大などを背景に電子部品・デバイスは前月比1.3%と好調を維持したが、情報通信機械が前月比▲8.2%と大幅な低下が続き、10月に6ヵ月ぶりの上昇となった輸送機械が前月比▲1.2%と再び低下した。
速報段階で公表される16業種中、11業種が前月比で低下、5業種が上昇した。
予測指数を業種別に見ると、12月は非鉄金属(前月比▲0.4%)を除く全ての業種が増産計画となっており、特に情報通信機械(同14.7%)、電子部品・デバイス(同16.9%)が高い伸びとなっている。ただし、11月は両業種ともに実現率が大幅なマイナスとなっており、12月の生産計画の伸びはかなり割り引いてみる必要があるだろう。
一方、12月が前月比7.8%、13年1月が同8.9%と2ヵ月連続で高い伸びとなっている輸送機械は、計画と実績の乖離が比較的小さい業種であること、減少が続いていた国内の自動車販売が持ち直しつつあることを考えれば、計画に近い伸びが実現する公算が大きい。生産減少の主因となっていた輸送機械が再び増加する可能性が高まったことは明るい材料と言えるだろう。
12年11月の生産指数を12月の予測指数で先延ばしすると、12年10-12月期は前期比▲0.7%の低下となる。3四半期連続の減産は確実だが、7-9月期の前期比▲4.2%からはマイナス幅が大きく縮小するだろう。鉱工業生産は年末から年明けにかけて底入れを探る展開となりそうだ。輸出の下げ止まりが確認されていないことが懸念材料だが、中国をはじめとしたアジア経済に回復の動きが見られること、円安の進展が追い風となることから、輸出は近いうちに持ち直しに向かうことが見込まれる。現時点では、鉱工業生産は13年1-3月期には4四半期ぶりに増加すると予想している。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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