コラム
2012年12月17日

多様性揺るがす「結婚力」格差-「結婚望む人が、結婚できる社会」を!

土堤内 昭雄

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先週の本欄に、2010年の男性生涯未婚率が20.1%、女性10.6%となり、生涯未婚の時代が近づいていると書いた1)。生涯未婚率とは、50歳まで一度も結婚していない人の割合とされるが、それは必ずしも生涯独身の人の割合ではない。ただ、ここで気になる点は男性の生涯未婚率が女性の2倍に上ることだ。男女の数がほぼ同じであれば、同性婚が認められていない日本では、生涯未婚率もほぼ同程度になるのではないか。夫妻の一方が外国人である国際結婚も男性の方が多いにもかかわらず、何故、男性の生涯未婚率が女性の2倍にもなるのだろう。

生涯未婚率は、45~49歳の未婚率と50~54歳の未婚率の平均値として算出される。2010年の国勢調査から45~54歳の配偶関係(不詳を除く)をみると、男性の未婚率20.1%、有配偶率73.1%、離・死別率6.7%、女性は未婚率10.6%、有配偶率77.7%、離・死別率11.7%となっている。このように男性の未婚率が高い一方で、女性の有配偶率と離・死別率が高いのである。

男性の離・死別率が女性より低いのは、離・死別した男性の再婚が多いからだ。近年のデータ2)をみると、2005年の婚姻のうち夫と妻がともに初婚である割合は74.7%、残る全体の4分の1は夫か妻の一方、もしくは双方が再婚者だ。そして夫が再婚で妻が初婚は全婚姻数の9.3%、夫が初婚で妻が再婚は7.1%と夫が再婚である割合が高い。つまり再婚により複数回結婚する男性がいる一方で、一度も結婚しない未婚男性が多くなり、男性の「結婚力」に格差が生じているのではないだろうか。

「結婚力」の重要な要素のひとつは所得だ。年収別の婚姻率をみると、30歳代男性の場合、年収300万円未満では9.3%、300~400万円では26.5%、400~500万円では29.4%と300万円を境に婚姻率に大きな隔たりがある3)。また、ある調査では、「未婚女性が結婚相手に望む年収」は、600万円以上が約4割と最も多く、この条件を満たす独身男性はわずか6%に過ぎないという。

若者の非正規雇用などが結婚困難な低収入男性の増加をもたらし、経済力が「結婚力」に格差を生む。動物は強いオスがメスを獲得し子孫を残すが、人間社会では経済的強者ばかりが人口の再生産に寄与することは望ましくない。何故なら、経済力に係らず素晴らしい個性・能力を持った人は多く、社会の成熟化には人間の遺伝的多様性を次世代に伝えることが重要だからだ。生涯未婚率の大きな男女差が、経済力を背景とした男性の「結婚力」格差の現れであり、それが『結婚望む人が、結婚できる社会』の実現を阻害しているとするならば、将来の日本社会の多様性が揺らぐことにならないか懸念される。


 

2) 厚生労働省「平成18年度 婚姻に関する統計の概況(人口動態統計特殊報告)」(2007年1月)

3) 内閣府「平成22年度 結婚・家族形成に関する調査報告書」(2011年3月)

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(2012年12月17日「研究員の眼」)

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