- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- シンクタンクに出来ること ~非常時に果たすべき役割はあるか~
コラム
2011年07月13日
少々旧聞の類に属するが、4月に政府・東電の統合対策本部が開催した外国プレス向け説明会に一人の記者も参加しなかったとの報道があった。日本が極めて深刻な事態に面していることは誰の目にも明らかであるにもかかわらず、このような事がおきたのはなぜだろうか。事前の手続きなどいろいろな事情もあったようだが、その場で得られる情報に対する期待感が外国人記者の間で極めて低かったのが原因だという指摘がある。海外のメディアは震災直後の3月は勿論のこと、4月になってからも様々な情報を発信している。このことから推測すると、上記の指摘もあながち間違いではなさそうだ。
同時に海外のメディアが独自の取材に基づいて発信した情報の内容には著しい間違いや偏見をともなったものも含まれている。日本の事情に詳しいメディア関係者が運営するWall of shameには、著しい間違いや偏見のある記事に対するコメントを載せている。数多くのフェアーな記事が存在する中で、こうした指摘を受ける記事はほんのわずかなケースだと思うが、震災被害にあった国の立場からすれば残念なことである。しかし、悪意や偏見に基づくものは言語道断としても、限られた時間のなかで産みだされる情報に「思い込み」や正確さを欠くことはやむを得ない部分もある。
かなり昔の経験だが、友人の勤務する会社は航空機疑獄とよばれた事件の渦中に置かれていた。その最中、その友人が他の社員と二人で会社から歩いて出でる姿を写真にとられることがあった。翌朝、さる新聞社の記事には「事件に肩を落として歩く社員」というタイトルでその友人らの姿が掲載されていた。その時の二人はどこで食事をするかを相談していただけだそうだ。よほど二人とも歩く姿勢が悪いのではと笑い話にしたものだが、今にして思えば、いくら経験を積んだメディア関係者であったとしても、限られた時間のなかでは、この類の「思い込み」は避けられないという例だったのかもしれない。
こうしたメディアの時間との勝負といった性格と比べると、一般にシンクタンクと呼ばれる我々のような研究組織においては、仕事を進める時間軸が一般的に長い。その為、ひとたび今回の震災のような非常事態が発生した際の動きは遅めになりがちだ。そんな状況にもかかわらず、一部の情報に対する海外からのニーズの強さには驚かされた。情報発信のための場でありながら記者が集まらない一方で、日本の状況はどうなっているのか情報を求める声がある。ただでさえ情報が限られやすい状況のもとで、このような情報の流れのミスマッチが起きているとすれば、深刻な問題であると言わざるを得ない。震災から4ヶ月を過ぎた今でも原発事故を巡る情報発信の遅れなどについて海外から様々な指摘がなされている。政府の対応に対する厳しい意見はもとより、メディア関係者の対応に対しても厳しい視線が向けられている。我々のような研究組織の人間はメディアそのものではないが、情報発信をすることを生業としている立場として考えさせられる機会が多い。今この瞬間、何を・誰に・どのように・伝えるべきかを考えながら仕事に臨む必要がある。
同時に海外のメディアが独自の取材に基づいて発信した情報の内容には著しい間違いや偏見をともなったものも含まれている。日本の事情に詳しいメディア関係者が運営するWall of shameには、著しい間違いや偏見のある記事に対するコメントを載せている。数多くのフェアーな記事が存在する中で、こうした指摘を受ける記事はほんのわずかなケースだと思うが、震災被害にあった国の立場からすれば残念なことである。しかし、悪意や偏見に基づくものは言語道断としても、限られた時間のなかで産みだされる情報に「思い込み」や正確さを欠くことはやむを得ない部分もある。
かなり昔の経験だが、友人の勤務する会社は航空機疑獄とよばれた事件の渦中に置かれていた。その最中、その友人が他の社員と二人で会社から歩いて出でる姿を写真にとられることがあった。翌朝、さる新聞社の記事には「事件に肩を落として歩く社員」というタイトルでその友人らの姿が掲載されていた。その時の二人はどこで食事をするかを相談していただけだそうだ。よほど二人とも歩く姿勢が悪いのではと笑い話にしたものだが、今にして思えば、いくら経験を積んだメディア関係者であったとしても、限られた時間のなかでは、この類の「思い込み」は避けられないという例だったのかもしれない。
こうしたメディアの時間との勝負といった性格と比べると、一般にシンクタンクと呼ばれる我々のような研究組織においては、仕事を進める時間軸が一般的に長い。その為、ひとたび今回の震災のような非常事態が発生した際の動きは遅めになりがちだ。そんな状況にもかかわらず、一部の情報に対する海外からのニーズの強さには驚かされた。情報発信のための場でありながら記者が集まらない一方で、日本の状況はどうなっているのか情報を求める声がある。ただでさえ情報が限られやすい状況のもとで、このような情報の流れのミスマッチが起きているとすれば、深刻な問題であると言わざるを得ない。震災から4ヶ月を過ぎた今でも原発事故を巡る情報発信の遅れなどについて海外から様々な指摘がなされている。政府の対応に対する厳しい意見はもとより、メディア関係者の対応に対しても厳しい視線が向けられている。我々のような研究組織の人間はメディアそのものではないが、情報発信をすることを生業としている立場として考えさせられる機会が多い。今この瞬間、何を・誰に・どのように・伝えるべきかを考えながら仕事に臨む必要がある。
このレポートの関連カテゴリ
取締役
前田 俊之 (まえだ としゆき)
研究・専門分野
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年04月23日
気候変動-温暖化の情報提示-気候変動問題の科学の専門家は“ドラマが少ない方向に誤る?” -
2024年04月23日
今後お金をかけたいもの・金融資産 -
2024年04月23日
今週のレポート・コラムまとめ【4/16-4/22発行分】 -
2024年04月22日
2024年3月、グローバル株式市場は上昇が継続 -
2024年04月22日
米インフレは下げ渋り-コアインフレは足元でインフレ加速の兆し。今後の動向は原油に加え、家賃や賃金が鍵
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
【シンクタンクに出来ること ~非常時に果たすべき役割はあるか~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
シンクタンクに出来ること ~非常時に果たすべき役割はあるか~のレポート Topへ