コラム
2011年04月15日

全世代の協力で大震災からの復興をわが国の大きな転換点に

平賀 富一

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東日本大震災の被災地の方々が、困難の中にあっても秩序を持って行動し、互いに他を思いやり助け合う姿が、世界の多くの人々から称賛・尊敬され、数多くの支援の声や義捐金・物資が届けられている。筆者自身、震災直後のアジア地域への出張時にも、各地でお会いした全員から、過去に幾多の苦難を乗り越えてきた日本を尊敬しその復興を信じているなど、被災地および日本への親身のお見舞いや激励の言葉をいただいた。また国際会議冒頭での全出席者による黙祷や、アジアを代表する有力企業の女性幹部が涙を流しつつ日本への想いを語ってくれたことも大きな感動を覚えることであった。わが国や日本人が、ODA(政府開発援助)等公的なもの、民間ベースの企業取引、個人・団体のボランティア活動、友人関係などを含め、各国の危機や国づくり・人づくりのニーズに応えて、誠実な対応や貢献を行ってきたことが世界中の多くの人々に浸透していることを改めて再認識した。

振返って、1890年に和歌山県の近海で遭難したトルコ船舶(エルトゥールル号)の救難支援を忘れず、1985年のイラン・イラク戦争時に、トルコ航空機を派遣し、テヘランに止め置かれた多くの在留邦人の脱出を支援してくれたトルコの厚情を連想した。また各国・地域の発展や暮らしの向上に寄与してきた多くのODA案件。自らの強いコミットメントで「命のビザ」を発給し続けた杉原千畝氏や、その生涯をブータンの農業改良に捧げ、同国の「農業の父」として知られる西岡京治氏など日本・日本人の国際貢献には枚挙にいとまがない。このような、わが国の先人・現役世代の真摯な努力が日本に対する強固な信用を作り出していることを感じる。特に、物心ついて以来、高成長やジャパン・アズ・ナンバーワンという時代を見ることなく育ってきて、内向き志向などと評されることに反発心も感じているだろう今の若者世代にとって、より新鮮な驚きと共に誇りや自信を感じることではないかと思う。

今回の大震災による大きな危機を乗り切って復興・再生を図るには、大きな目標に向かって、日本がその特質とされる組織力・団結力で取組まねばならないが、そのためには、日本の明日を中核となって担う若い世代の意見も十分に汲み取って全世代で力を併せて取り組むことが必要であると思う。その意味で、例えば、復興構想会議・傘下の部会など関連の諸会議のメンバーには若者代表を含めることが望ましいと考える。省エネ・IT化を進め、環境配慮に優れ、高齢者・身障者に優しく、外国人にも過ごし易く魅力があり、かつ国際的な競争力をもった新たな街づくりをデザインし実行することはわが国の大きな転換点となると思う。そのためには、柔軟な発想をもち未来を展望できる若い世代の声を反映したい。そうした取組みと努力によって復興・再生を実現し、先人が築いてくれたわが国の信用をさらに高めていきたいと思う。
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平賀 富一

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