2008年02月12日

東京G7:世界経済に下方リスク、しかし具体策なし

総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任 矢嶋 康次

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■見出し

・世界経済:不確実な環境に直面している
・為替:前回とほぼ同様の内容
・市場安定化策:やはり具体的な対応策なし

■introduction

7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が2月9日、8年ぶりに東京で開かれた。米サブプライム問題から金融市場の動揺が続き、世界経済の先行き不透明感が強まる中、世界経済・市場安定に向けた対応策が協議された。
G7声明では、「昨年10月の会合に比べ、世界はよりチャレンジングで不確実な環境に直面している」と指摘。米国について「生産と雇用の伸びが大幅に減速し、リスクは一層下方に傾いている」との厳しい認識を示した。その上でG7全体では「世界的な経済・金融の動向を反映して程度の差はあるが、成長は短期的にいくぶん減速すると見込まれる。下方リスクが存続している」との見方を示した。
前回07年10月にワシントンで開かれたG7では、夏にサブプライム問題により世界的な市場の混乱が表面化していたが、まだ声明では「力強い成長は5年目に入っている」「全体のファンダメンタルズは引き続き強力である」などと強いトーンがあったが、今回大きく状況判断が下方修正されており、環境が急変したことを端的に示している。
世界経済・市場を安定軌道に戻すため「個別にあるいは共同して適切に行動する」と明記され、また「協調」の文言は入っているものの、具体的な行動は明記されていない。各国の置かれている状況の違いもあるが、今のG7の枠組みに限界があることを改めて印象づけている。
今回G7は、ほぼ予想通りの内容だった。世界経済が厳しさを増す中、具体的な策は提示されず、市場の不安はぬぐえていない。
市場の株安、ドル安の流れは当面続く可能性が高い。米国景気の一段の悪化、モノライン資本増強策の不振、金融機関損失拡大などネガティブ材料が出た場合、大きく下振れするリスクが高い状況に変化はない。

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総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次 (やじま やすひで)

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

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