2007年12月26日

地方公共団体の財政状況に対する評価と市場公募地方債の流通利回り

石川 達哉

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1.
近年、地方債発行における市場公募債の割合が急速に高まるとともに、協議制度への移行、発行条件決定に際しての「個別条件交渉方式」の採用などが行われ、地方債を巡る環境は大きく変化している。これらの結果として、流通市場での地方公共団体に対する評価が地方債発行のコストに反映される関係が強まるなか、専門格付機関から「依頼格付け」を取得する地方公共団体が急増するなど、市場との対話も前進しつつある。
2.
これまでも公開情報に基づいて判定がなされる「非依頼格付け」が行われており、決算指標と並んで、地方債投資の重要な判断材料として利用されてきたものと考えられる。そこで、市場公募地方債発行団体の2002~2006年度のデータに基づいて、既発債流通利回りの対国債スプレッドに影響する要因について計量分析を行うと、当該団体の「信用リスク」、地域の景気状況、採用銘柄の市場性に関わる各種変数のうち、格付け、経常収支比率、財政力指数、償還までの残存日数等が有意な説明力を持っている。
3.
上記のうち、残存日数を除けば、説明力を有する変数は地方公共団体の財務状況に関する情報や市場の評価を体現したものと言え、これらが、既発債と新発債の代替関係を通じて、新発債の発行コストに影響を与えることになる。市場公募地方債の発行を通じた資金調達コストを抑えるためには、各団体が財政状況を改善させ、市場の信認を高める必要があることが裏付けられる。

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