2007年10月30日

経済財政諮問会議(10月25日)~提示された税方式と保険料方式の選択肢

篠原 哲

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■見出し

・基礎年金の財源を巡る議論が開始
・税方式か保険料方式か
・税方式のメリットと問題点

■introduction

10月26日に「国立社会保障・人口問題研究所」が公表した2005年度の社会保障給付費は、87.9兆円と前年度よりも1.9兆円の増加となった。これは、国民所得との比較では23.91%の規模であり、対前年度で0.22%ポイントの増加となっている。また、その内訳に目を向けてみると、「医療」に関する給付は国民所得比7.65%であり、対前年度で0.17%ポイントの増加、介護などを含む「福祉」は3.68%、対前年度では0.01%ポイントの増加である。また給付全体の約5割を占める「年金」は国民所得比で12.59%、対前年度比で0.05%ポイントの増加となっており、高齢化が進展するなか、我が国の社会保障給付は、国民所得の伸びを上回って拡大する傾向が続いている。このような給付の財源を、どのように確保していくかは、社会保障制度を維持していくうえでの大きな課題である。
社会保障給付の財源は、保険料だけでなく、国庫負担(税)からも賄われている。このなかで、全国民を対象に適用される国民年金のうち、共通に支給される定額部分である基礎年金については、年金財政の安定性を確保するという観点から、2009年度には国庫負担割合が、現行の3分の1から2分の1に引き上げられることが、すでに決定されている。
現時点では、その際に必要となる約2.5兆円の税財源には、消費税の増税分を充てるとの見方が有力視されているが、参議院の第一党となった民主党は、消費税の増税を否定している。さらに、基礎年金の財源については、現行の保険料方式を廃止し、財源の全てを税で賄う「全額税方式」の導入を主張していることもあり、基礎年金の財源に関する問題は、消費税の増税の問題とも併せて、注目度が高まっている状況である。
10月25日の経済財政諮問会議では、有識者議員提出資料「持続可能な基礎年金制度の構築に向けて」として、将来的な基礎年金の財源に関する選択肢が提示された。
提出された資料では、まず、現状における基礎年金制度の問題点が列挙されている。そして、その克服を目指した今後の改革の方向性として、(1)国庫負担を1/2として現行の保険料方式を維持、(2)国庫負担を全額税方式へ切り替える、という二通りの選択肢が提示され、現行の保険料方式を維持した場合と、全額税方式に移行した場合に必要となるそれぞれの財源額が明示されている。さらに、税方式に移行する場合におけるメリットとデメリットについてもまとめている。
従来までは、消費税に関する議論が、事実上凍結されてきたこともあり、基礎年金の財源問題に関しても、本格的な検討が進まなかったのが実情である。しかし、今回の様に、諮問会議の場で将来的な基礎年金の財源についての選択肢が提示され、その実現に必要な財源規模も明らかになったことは、「税と社会保障の一体的な改革」に向けた、事実上のスタートとして位置づけられるのではないだろうか。

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