2007年10月29日

調整局面の不動産投資市場-リスク感度の高まりで,ファンダメンタルズとのかい離修正が進む

松村 徹

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■見出し

1. 不動産投資市場の現状
2. 不動産ファンダメンタルズの現状
3. 市場関係者の見方-第4回不動産市況アンケート結果-
4. 不動産投資市場の調整

■要旨

不動産投資市場では1,000億円を超す大型取引が相次ぎ、市場の過熱や行き過ぎを懸念する見方も一部にある。しかし、2007年5月31日に最高値をつけた東証REIT指数は、米国発のサブプライム・ローン問題などの影響で急落し、その後持ち直したものの不安定な動きとなっている。
拡大してきた不動産証券化市場の資産規模も、成長率が鈍化傾向にある。2005年前後から上昇に転じた大都市圏の地価は、はやくも一部地域で減速し始め、天井感も指摘されている。今回、ニッセイ基礎研究所が行った第4回不動産市況アンケート結果からも、不動産投資市場の潮目が変化しつつある可能性が読み取れる。
また、サブプライム・ローン問題で海外からの資金フローが減少したとみられるが、金融商品取引法(金商法)施行の影響などもあり、投資家や金融機関のリスク感度は従来より高まり、投資・融資対象となる不動産やファンドの選別が静かに進んでいるとみられる。
不動産投資市場では、このような資金フローの変化により、拡大し過ぎた不動産ファンダメンタルズとのかい離の修正が続くと予想される。すでに調整局面にあるJ-REIT市場では、運用会社のマネジメント力などの差による選別化が進んでいるが、玉石混交といわれる私募ファンド市場においても、同様の傾向が強まるであろう。価格上昇期待の低下で出口戦略の修正を余儀なくされるファンドの増加も予想され、金商法で投資運用業のハードルが引き上げられる中、ファンドの淘汰と業界再編が一気に進む可能性が高い。
今後、不動産投資市場の調整がソフトランディングして成長トレンドに回帰するためには、(1)サブプライム・ローン問題が収束に向かう、(2)日本の景気回復が持続して不動産ファンダメンタルズが概ね堅調に推移する、(3)日本の不動産投資環境が他国に比べて有利な状況が持続する、(4)金商法により不動産投資市場の透明性や投資家の信任が高まる、という条件が満たされる必要があると思われる。

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松村 徹

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