2007年01月24日

オフィス市場はいつまで好調を持続するか -景気後退と団塊退職で2009年には市況悪化も-

松村 徹

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■見出し

1. オフィス市場の現状
2. オフィス市場の中期見通し

■要旨

東京オフィス市場の空室率は2003年後半から低下し、賃料は2005年から上昇に転じた。また、景気回復を背景に全国の主要都市でも空室率は低下しており、名古屋名駅を筆頭に大阪梅田や新横浜、札幌駅前など一部エリアで賃料の上昇も目立ってきた。ただし、市場には最近の新築ビルと比べて建築・設備条件や立地などが著しく劣り、高度化・多様化した企業のオフィスニーズに対応できないビルも少なくない。このような需給ミスマッチによる構造空室率は、2~2.5%あると推計されるため、今後、景気回復が持続しても、空室率が1%台まで低下する可能性は低い。
今回の需要拡大では、大都市のオフィスワーカー率が過去のトレンドからみて不連続ともいえるほど大幅に上昇している。これには、企業の非正社員依存度の高まりという最近の雇用構造の変化が大きく影響しているものと考えられる。特に、情報通信サービスや教育・学習支援など近年成長が著しくオフィスワーカー率も高い業種で、非正社員の採用増加が顕著なため、オフィスワーカー率が上昇するとともに賃貸オフィスのワーカー数も増加したと思われる。ただし、企業の非正社員依存度上昇により雇用の景気感応度も強まってきたため、今後の景気減速や後退局面では、オフィス需要が急減するリスクも高まっていることに注意すべきである。
当面は好調を持続すると思われるオフィス市場の不安要素は、景気後退という循環的要因と団塊世代退職という構造的要因であり、両者が重なる2009年度には、一時的な市況悪化が予想される。このような市場のダウンサイドリスクを回避するため、長期的なビル事業や投資においては、将来の賃料上昇を過大に織込まない、長期の定期借家契約を締結する、団塊世代の少ない業種・企業を誘致するなどの対応が考えられる。また、仮に景気が後退しても、成長業種や成長企業に選ばれるオフィス環境を提供できるよう、物件やポートフォリオの優良化や高度化を図ることも重要である。

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