2005年08月25日

信用創造回復の兆し

総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任 矢嶋 康次

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■目次

1.なお資金余剰が続く企業部門
2.足もとでは借入れ減少にトレンド変化
3.信用創造の回復も量的金融緩和政策変更のチェックポイント

■introduction

バブル崩壊後に日本経済を悩ませてきた債務・雇用・設備の三つの過剰問題は大きく改善した。非金融法人部門の借入金の名目GDP 比はバブル崩壊直後には100%を越えていたが、最近では大きく低下している(図表-1)。失業率も2003 年度以降は、低下している。日銀短観では雇用人員判断や生産・営業設備判断で、過剰感が弱まっているなど、過剰雇用問題や過剰設備の解消もかなり進んだ。
しかし、企業は財務体質の改善の手を緩めようとはしていない。日銀の資金循環統計で見ると、2004年度は昨年度に比べ企業の資金余剰幅は18兆円ほど縮小し15兆円となったが、98年度以降、7年連続で資金余剰は続いている。
企業部門が資金余剰主体となった98年度は、景気悪化・金融システム不安が台頭する中、企業の資金需要は大きく冷え込んだ。さらに銀行による貸し渋りが発生し、企業部門にとっては最悪の状況の中で大きくバランスシートを縮小しながら資金余剰に転じていった。しかし足もとでは、財務体質は格段に改善し、さらに輸出企業を中心に企業が最高益をあげる中でも、設備投資をキャッシュフロー以内に押さえ込んでいる。
こういう特殊な状況が長く続くと、今後も引き続き企業は資金調達を行わないだろうと思ってしまうが、足もとで少しずつではあるが、企業の資金調達に変化が見え始めている。

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総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次 (やじま やすひで)

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

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