2002年11月12日

拡大する私募型不動産ファンド市場 -そのビジネスモデルと市場展望

松村 徹

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■見出し

1. これまでの市場動向
2.ビジネスモデル
3.今後の成長シナリオ

■要旨

配当利回りの高さと安定した価格推移が評価されてJREITに投資家の注目が集まっているが、特定少数の投資家を対象にした私募形態の不動産ファンド市場も急速に拡大し、外資系、日系合わせて様々なファンドが組成されている。その運用資産規模は日系だけでも公表ベースで4,000億円以上にのぼる。
私募ファンドは、少数の投資家とファンド組成者による共同投資的な側面が強く、パートナーシップ型の不動産ファンドともいえる。投資対象はJREITと競合しない物件タイプや独自の取得ルートからの不動産で、イールド・ギャップといわれる借入金利と不動産投資利回りの格差を背景に、レバレッジの効いたエクイティ投資で高い利回りを期待する。最近では、海外の大口投資家だけでなく、有利な運用先を求める国内機関投資家や個人富裕層も関心を高めている。私募ファンドの最終的な出口は、インカム・ゲインを目的として長期運用するJREITなどの投資家か、個人や事業法人などの最終利用者である。
私募ファンド事業者の収益は、ファンド運用に関わる報酬と、投資家とのリスク共有を目的とした出資に対する収益、ファンド運用の周辺分野からの収益で構成される。ファンド運用の周辺分野とは、自己勘定での投資やデュー・ディリジェンス、売買仲介、プロパティ・マネジメント、投資アドバイザリーなどで、利益相反リスクがある反面、ファンド事業遂行との相乗効果も狙える事業構造となっている。
私募ファンド市場の持続的成長のためには、不動産供給の増加、投資家層の拡大、不動産税制の見直し、経済の先行き不透明感の払拭が欠かせない。これは、JREIT市場成長の条件とも重なる。私募ファンドの出口戦略においてJREITの存在は不可欠なだけに、私募ファンド市場とJREIT市場の成長は相互に関係し合っている。しかし、外部環境がどうあっても、まずは投資家が期待する運用実績をきちんと出し続けて、幅広い投資家の信認を得られるよう最大限努力することが、既存の私募ファンド事業者にとっての大きな課題である。

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松村 徹

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