2002年02月25日

セグメント・ポートフォリオ構築の試み

遅澤 秀一

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 日本の株式市場では、1990 年代前半までバリュー投資の優位性が明らかであったが、それ以降、二極化相場、ITバブルとその崩壊を経て、スタイル(バリュー/グロース)間のリターン格差の変動が増大している。特定のスタイルに傾斜したポートフォリオの構築により、ベンチマークであるTOPIX を上回る運用成績を確保しようとして、スタイル・リターン格差の変動に対処できずに、パフォーマンスを悪化させるファンドが続出した。
株式の期待収益率の予測可能性については多くの議論がなされてきたが、銘柄属性がクロスセクションの期待収益率の決定要因になるという説も有力である。しかし、わが国の場合、1990 年代前半までとそれ以降でまったく異なった様相を呈している。つまり、バリュー指標やリターン・リバーサルの有効性は1990 年代後半に不安定さを増している。
このような状況下の株式運用手法としては、(1)スタイル・ローテーション戦略、(2)成長性を考慮した株価評価モデル構築、(3)スタイルによって区分されたセグメント内での銘柄評価法確立等が考えられる。その中で、本稿では第三の立場をとって実証分析を行う。
規模、B/P(1株当り純資産/株価)を第1変数、銘柄属性を第2変数とする分位分析結果によれば、規模やB/Pの水準によって銘柄属性の収益率に与える影響が異なる。特に小型株では、1990 年代後半でもバリュー指標の影響度は安定している。また、業績予想変更率のように小型株のみ有効な属性もある。E/P(1株当り当期利益/株価)のように業績情報を含む属性は、B/Pに付加的な情報を与えることも確認された。
セグメント分類として、大型、中型バリュー、中型グロース、小型の4分割を採用する。東証1 部上場銘柄を4セグメントに年1回分割して、各々の中で銘柄評価を試みる。
月次収益率を被説明変数、銘柄属性を説明変数にした回帰モデルを構築し、回帰係数(ペイオフ)の安定性を検証した。さらに、回帰係数を平滑化した期待ペイオフと銘柄属性の積和によって期待収益率を算出し、その収益率との関係を実証分析した。4セグメント区分によって、1990年代後半でもペイオフの安定度は高まった。特に中型バリュー、小型のセグメントではバリュー指標が顕著に有効だった。その反面、中型グロースは他のセグメントほど頑健でなく、グロース株投資における銘柄選定の難しさを示唆する結果となった。

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