2001年11月01日

企業における長期利潤率格差の要因分析

小本 恵照

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  1. 企業の利潤率には、格差を均等化させようとする力と、利潤率の格差の解消を押し止めようとする力の両方が作用していると考えられる。本レポートは、企業の長期的利潤率に対するこの相反する力のうち、いずれのほうが強く作用しているか、製造業1056 社の財務データを用いて検討を加えたものである。

  2. 1976 年度から1999 年度までの24 年間の利潤率推移を分析すると、景気変動などによる波はあるものの、1976 年時点に高い利潤率を示していた企業は、その後も長期間にわたり高い利潤率を示すことが多いことが明らかとなった。

  3. 数種類の指標を用いて利潤率ランキングの上位15 社と下位15 社を作成すると、いずれにも共通して登場する企業が多く、また特定の産業への偏りが観測される。

  4. 長期利潤率に影響を与える要因を検出するために、長期利潤率を被説明変数とし、産業、株主構造、財務構造、多角化、合併などの要因を説明変数とする回帰分析を行った。それによると、(1)企業が属する産業、(2)自己資本比率、(3)自己資本比率の変化、(4) 外国人株主比率などが統計的に有意な影響を与えていることが明らかとなった。

  5. ただし、上記の要因が利潤率の格差を説明する割合は全体の1~2割に過ぎず、経営者の能力、従業員の資質、経営ノウハウ、企業風土といった企業固有の経営資源が少なからぬ影響を与えているとみられる。

  6. 今後の企業経営に当っては、(1)柔軟な事業選択、(2)企業固有の経営資源の蓄積、(3) コーポレート・ガバナンス構造や財務構造への配慮が重要と考えられる。また、一旦高い収益性が獲得できる経営組織を構築すれば長期的にその果実を享受できる可能性が高いことを認識し、競争優位のある企業組織の構築を目指すことが強く期待される。

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