- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 産業の空洞化論議にみられる経済的現象とその評価
1996年10月01日
<要旨>
- いわゆる空洞化現象の影響が発現する時間的視野がバラバラなまま、同じ土俵で混同して議論される空洞化論議を整理する。ここでは80年代の米国の空洞化論議でみられた、(1)輸入の場加(貿易収支赤字拡大)、(2)直接投資の増加、(3)製造業の雇用シェア減少-などを「空洞化を示唆するとみられる経済的現象」(「空洞化現象」)と呼び再整理してみる。
- 空洞化現象を再整理すると、(1)「国内生産と輸入の代替」、(2)「国内生産と海外生産の代替」、(3)「製造業と非製造業の代替」の3点にまとめることができる。この観点から日本の空洞化現象の進展状況を判断すると、空洞化先進国とされる米、英国と比し、日本経済全体の空洞化は現在のところ、さほど進展していない。
- 「空洞化現象」は円高との関連で議論されやすい。しかし、円高(為替増価)が「均衡レート」を反映したものなのか、「均衡レート」から乖離した水準にあるのかにより、円高の経済的影響は異なる。。
- 日本の海外直接投資は、80年代後半以降大幅に増加した。もっとも、地域別では80年代の欧米向け、90年代アジア向けが増加し、それぞれの地域における直接投資の誘発要因も異なっている。欧米向けは、現地販売のための生産拠点としての性格が強く、現地の景気情勢に比較的影響を受けやすい。アジア向け投資では労働集約的な生産工程を前提にコスト面を重視している様子が窺える。90年代の直接投資では、為替レートの影響は欧米向けは有意でなく、アジア向けの投資に有意となっている。
- 海外直接投資にとって、為替は一つの誘発要因にすぎない。しかし、その為替レートが「均衡レート」を超える円高水準になると「為替リスク」を懸念する企業が増加し、直接投資を加速させることがわかる。つまり、「均衡レート」を超えた円高水準にある場合、直接投資を予定していなかった企業まで、海外生産化を進めることとなり、「海外生産と国内生産の代替」が進み空洞化現象を促進させることとなる。
このレポートの関連カテゴリ
日本大学経済学部教授 小巻 泰之
研究・専門分野
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年04月18日
サイレントマジョリティ⇒MAGAで熱狂-米国大統領選挙でリベラルの逆サイレントマジョリティはあるか- -
2024年04月18日
「新築マンション価格指数」でみる東京23区のマンション市場動向【2023年】(1)~東京23区の新築マンション価格は前年比9%上昇。資産性を重視する傾向が強まり、都心は+13%上昇、タワーマンションは+12%上昇 -
2024年04月17日
IMF世界経済見通し-24年の見通しをやや上方修正 -
2024年04月17日
不透明感が高まる米国産LNG(液化天然ガス)輸入 -
2024年04月17日
英国雇用関連統計(24年3月)-失業率は増加し、雇用者数も減少
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
【産業の空洞化論議にみられる経済的現象とその評価】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
産業の空洞化論議にみられる経済的現象とその評価のレポート Topへ