1996年02月01日

アジア経済の中の両岸中台関係

山口 典昭

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■見出し

1.はじめに-≪華僑-アジアの資金循環の動力≫
2.開き始めた門戸-両岸関係の幕開け
3.両岸経済交流の歩み
4.台湾企業の大陸投資概況
5.高岸貿易の成長
6.両岸経済交流の抱える問題点
7.台湾政府の「南進政策」措置
8.まとめ

■introduction

体ひとつで海外に乗り込み、今日まで台湾人はその旺盛なバイタリティーで新天地を開拓してきた。金儲けになるところ――基本的な考え方は皆同じである。又彼らは働き者で誰よりも進んで多くの時間と労力を使って商売に走っている。華僑勢力は全世界に及んでおり、ここ数年世界各地における開発事業や中国大陸への進出等の活躍で、世界中から注目されている。
現在海外に居住する華人は約3,000万人でその内9割がアジアに集中し、東南アジア一体では約2,300万人にも及んでいると言われている。この集団は互いに繋がりを深めつつあり、大きな存在になって来ている。
人の数が多いというだけでなく、財テク、資金調達、事業展開等いわゆる金儲けに長けているため、華人中心のシンガポールを初め、タイ、マレーシア、ベトナム、更には華人占率10%以下のインドネシアに至るまで華僑は早い時期からそれぞれの国で経済の根幹を握ってきた。1970年代以降、華僑は伝統的な貨物貿易、サービス業で蓄えた資金で金融、不動産、通信産業を動かし、アジアにおける外為市場、株式市場で水面下において「金融華邦」と呼ばれるネットワーク勢力を形勢してきた。一方でその人脈を活かして欧米、日本企業との提携を進め、各種の製造業に進出、それぞれが大型の企業グループを構築し、その企業グループ同士で手を結んでいる。
1990年代に入り、台湾、香港、中国大陸の華人地区において人と金とが流動的になったために、伝統的な華僑圏は大きな変化を起こしている。香港の1997年返還の影の下で人と金とが急速に外流しはじめている。逆に人口12億に達する中国大陸は開放政策を実施して以来、一方でアジアの資金を吸収し、一方で大陸内での人口移動が始まっている。
この様なアジアにおける華僑資本の大きな流れの中で、台湾華僑の中国大陸への進出、東南アジアへの進出は一つの流れにすぎないが、彼らの思考の軌跡、展望を知る上で、1つの参考になるのではなかろうか。そこで台湾-中国大陸の両岸交易の軌跡と展望についてレポートしてみたい。

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