1991年08月01日

夫婦のパートナーシップ現代考

岡本 裕子

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<要旨>

  1. 現代の日本の結婚は、娩婚化と男女の年齢差の縮小化、また「恋愛」結婚の増加が特徴となっている。一方離婚をめぐる特徴として、'50年以降、40歳以上の中高年夫婦の離婚率が一貫して増加、また夫も妻も、離婚の申立理由として「性格不和」が最多、さらに申立件数で妻からの申し立てが圧倒的に多い点があげられている。
  2. 本年1月に実施した「ニッセイビジネスマンアンケート」によると(以下同様)、「お互いにコミュニケーションを大切にしたい」という気持ちは夫婦ともに一致しているが夫が妻よりも仕事第一主義に賛同し、伝統的な性役割観に基づいた意識を持っている点、妻においては、夫よりも日常生活おける男女平等意識、自立意識が強い点において夫婦間にズレが生じている。
  3. 同一夫婦のそれぞれのパーソナリティにおいては、夫に関しては「責任感」「誠実さ」「優しさ」、妻に関しては「明るさ」「優しさ」「子供に対しての愛情」が夫婦の絆を深める要素となっている。しかし、夫においては、妻が家庭経済を基盤に現実の生活のふれあいを夫に期待するのに対してどちらかというと地味な精神性に自信を持っている姿、妻に関しては、夫が伝統的な女性観に基づいた期待を妻に寄せるのに対して、素朴なシンの強さに一方的に自信を持っている姿が浮き彫りにされ、双方の意識にズレが見えはじめている。また、相手から期待されず、本人も自信を持たない項目をみてみると、新鮮さを欠いた夫婦関係、コミュニケーション不足の様相を少なからず感じさせる結果となっている。
  4. 従来の価値観に沿って考えれば、現代の夫婦の関係性の変容は<家庭生活の崩壊のはじまり>と捉えられがちである。しかし、この過渡期の時代は、たとえ最初は夫婦間で大きな迷いや葛藤を生んだとしても、双方が誠実に対峙することにより、真の信頼関係に基づいた関係へと転換を図っていくことができる絶好のチャンスではないだろうか。夫婦間の意識のズレや、乖離に目覚め、『日常性』の変革を少しずつ行ってみることが、高齢化社会を迎えようとするこの時代に、夫婦が持続して共によりよいパートナーとして生き抜いていくことに繋がるかもしれない。
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