1990年08月01日

日本の対外バランスとアジア太平洋経済:'90年代への展望

竹中 平蔵

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■見出し

1.アジア太平洋経済の基本メカニズム
2.1990年代のアジア太平洋経済
3.「新・前川レポート」の提唱

■introduction

日本およびアメリカの対外収支不均衡是正は、'90年代も引き続き両国の重要な政策課題となっている。その際重要なのは、日米の政策変化が、結果的に他の地域へも大きなインパクトを及ぼすことである。とりわけ、日米両国と経済的に深いつながりをもつ近隣地域、即ち、アジア太平洋地域に対してどのような政策波及が生じるか、充分な配慮が必要である。1992年のEC統合、ソ連および東欧諸国での自由化進展とそれによる東西対立の緩和は、日本にとってのアジア太平洋地域の重要性を、従来以上に高めつつあると言ってよい。

周知のように、アジア太平洋経済が'80年代を通して力強い発展を遂げてたことを受けて、日本の経済論壇でも、今後の同地域の可能性を高くたたえる議論が数多く見られている。しかし、こうした昨今のバラ色の議論では、ともすれば同地域の「供給サイド」サクセス・ストーリーのみが強調され、「需要サイド」の問題が軽視される傾向がある。需要サイドの問題を考える時、アジア太平洋経済の将来は、もっぱら日本のマクロ経済運営と構造調整に依存していることが強調されねばならない。

以下では、まず、日本、アメリカ、アジアNIES・ASEANを三つのプレーヤーとする、'80年代のアジア太平洋経済の碁本的需給構造がどうであったか、サーベイする。その後に、小型世界モデルのシミュレーションを通して、'90年代前半の日米を中心とする対外収支不均衡の動向と、さらにそれに対する政策対応がアジア太平洋地域にもたらすインパクトを計量的に議論する。最後に、こうした分析を踏まえて、日本は同地域の新しいアブソーパーとしての役割りを果たせるのか、またそのためにどのような国内改革が求められているかを検討する。具体的な政策提言として、国民の経済厚生を含めつつ対外的な貢献・調和を実現すべく、内外価格の是正を中間政策目標とする「新前川レポート」の必要性を明らかにしていく。

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