1990年03月01日

'90年主要産業見通し

山村 浩

松尾 良秋/窪谷 治/小野 正人/小川 則道

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<はじめに>

1989年は「昭和」の終わりと「平成」のはじまりといった時代の大きな区切りだったが、わが国の経済・産業活動は若干の程度の差こそあれ良好なパフォーマンスを示した年であった。すなわち、国内の景気は力強い内需に支えられて投資が投資を呼ぶ環境を生んだし、円高定着に対する企業の合理化努力も奏功、両々相まって主要企業の業績も増収・増益が見込まれる状況にある。

'89年はまた、年度初めに消費税の導入があったにもかかわらず個人所得の増加や週休2日制の定着などが個人消費の増大に拍車をかけ、自動車販売や小売売り上げ、レジャー関係支出などを大きく伸ばして関連産業の好調を支えた。

'90年の産業界を展望すると、輸出は現地生産の進展や米国景気の減速などから前年に比して伸び悩むと見込まれるものの、内需は引き続き堅調と予測され、全産業を通して目立った落ち込みはないものと予想される。

ただ、全産業にわたって深刻化してきた労働力不足や、これまでの設備投資に伴う償却負担増、原油価格の動き、為替の動向、すでに現実のものとなっている金利の上昇などいくつかの懸念材料もあり、企業経営にとって必ずしも明るいとばかりはいえない。こうしたこともあって、環境変化への対応力や新事業進出の成否などが一段と企業間格差を鮮明にすることとなろう。

目を外に転じれば'90年代初頭の世界情勢は混迷の度を加速しているかのようにみえる。しかし確実に言えることは、潮流はかつての不信と対決の時代から、共存・共生、対話にもとづく建設の時代に向かっているということである。

最も効率的な工業化社会を築き上げたわが国産業界が、来るべき21世紀に向けてリーダーシップを取りうるか否かは、従来の上下、支配・被支配関係に基づかない形での国際分業をいかに構築できるか、またそれを地球的な規模で推進することができるかどうかにかかっている。この目的のためには、目先的な利潤追求にとらわれない大局的な観点に立った戦略の立案とそれにもとづく行動が、今まさに切望されているのである。

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