1989年01月01日

米国の貿易外収支の最近の動向

大竹 康喜

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■見出し

1.はじめに
2.米国の貿易収支、貿易外収支および経常収支の動向
3.貿易外収支の動向
4.貿易外収支各項目について
5.投資収支の動向
6.終わりに

■はじめに

米国経済の抱える構造的問題としての「双子の赤字」は、世界経済の不安定さを増大させている。財政収支赤字については、'86年度2,212億ドル赤字(対GNP比5.3%)から、'87年度には1,497億ドル赤字(同3.4%)と大きく減少したが、'88年度は1,551億ドルの赤字(同3.2%)であり、対前年悪化しており、今後ブッシュ新政権がどのような対策を打ち出すかが注目されている。一方、国際収支についてみると、貿易収支は'88年に入り縮少傾向を見せている。'87年が年間1,703億ドル(FAS-CIFベース)の赤字、月平均142億ドルの赤字を計上したが、'88年1-10月で1,134億ドル、月平均では113億ドル、年間では1,300億ドルと推定される(当研究所予測)ため、前年と比較して400億ドル程度改善されるものと思われる。'85年以降、ドルが主要通貨に対し大幅に下落したため、米国企業に輸出競争力がつき、今後もスピードは落ちるものの改善が見込まれている。

しかし、経常収支のもう一つの大きな構成要素である貿易収支は、このところ悪化傾向にある。'86年には228億ドルの黒字を計上し、経常収支赤字額の縮少に貢献していたが、'87年は対前年比11%減少し204億ドルの黒字に止まった。四半期ベースでは'88年第2四半期にはほぼ0となるなど、期を追って悪化している。

貿易外収支が悪化することは、例え貿易収支が改善したとしても経常収支赤字は貿易収支の改善分縮小しないこととなる。経常収支の大幅な赤字が続くことにより、米国の対外純債務残高の増加を通じて、ドルの不信任、米国の金利上昇、株価の下落、発展途上国の累積債務問題への波及等のシナリオが考えられることとなり、世界経済の安定性にとって重大な障害となる。

今後は、貿易収支の改善基調を前提にするとしても、貿易外収支の動向に注目する必要があろう。そこで、本稿では貿易外収支の最近の動向について述べるとともに、今後の展望について考えてみたい。

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