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2024年03月29日

晩年に関する不安~老後とその先の不安には「近居」が“程よい距離感”

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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1――晩年に関する不安

1不安の全体像
晩年に関する9つの不安3について、不安の度合いを「不安である/やや不安である/どちらともいえない/あまり不安でない/不安でない/該当しない」の6段階で尋ね、それぞれの不安について「不安である」と「やや不安である」を合計した割合を図表1に示す。

9つの不安の中では、「自分の介護で家族に負担をかける」が全体で45.6%ともっとも高く、次いで「要介護状態になったとき自分の尊厳が無視される(40.9%)」、「望まない延命措置を受ける(37.2%)」「家族を遺して死亡する(33.7%)」が続いた。自分の死後に関する不安としては、「相続が円滑に行われない」「死後に自分の入るお墓を守る人がいなくなる」と「「家」が途絶えてしまう」が全体で2割強となっていた。

年齢や家族構成別にみると、「要介護状態になったときの自分の尊厳が無視される」「自分の介護で家族に負担をかける」は、高年齢で不安に感じる度合いが強く、自分が要介護状態になった場合に関しては、介護される自分の負担に対しても、介護する家族の負担に対しても不安が強いようだった。一方、「「家族に介護してもらえない」「相続が円滑に行われない」「望むような葬儀が行われない」は、高年齢で不安に感じる度合いが低くなっていた。高年齢では、年齢や経験を重ねていく中で、将来を具体的に思い描けるようになり、晩年に関する不安についても軽減していくものがあるのかもしれない。「死後に自分の入るお墓を守る人がいなくなる」「望むような葬儀が行われない」「「家」が途絶えてしまう」は20歳代と未婚で特に高かった。20歳代などの若年では、親も存命である人が多いと考えられることから、自分の死後の諸問題については、遠い先のことだろう。独身である人も多く、晩年に自分がどういった家族とどのように暮らしているのか想像もつきにくいながらも、若い時代や独身時代には気がかりの1つのようだ。なお、「家族を遺して死亡する」と「望まない延命措置を受ける」に対する不安は年齢による明らかな傾向は見られなかった。
図表1 不安計(不安である+やや不安である)
子どもの有無別にみると、「自分の介護で家族に負担をかける」は子どもがいる場合に、「家族に介護してもらえない」「死後に自分の入るお墓を守る人がいなくなる」「望むような葬儀が行われない」「「家」が途絶えてしまう」は子どもがいない場合に高かった。それぞれ、子どもがいる・いないならではの不安だろう。こういった家の存続等に関する不安は、男女を比較すると男性で高く、家の存続に関して、男性への期待が大きいと考えられた。

以下では、65歳以上に分析対象を絞って、家庭の状況と不安についてみていく。
 
3 9つの不安とは、「要介護状態になったとき自分の尊厳が無視される」「望まない延命措置を受ける」「自分の介護で家族に負担をかける」「家族に介護してもらえない」「家族を遺して死亡する」「死後に自分の入るお墓を守る人がいなくなる」「相続が円滑に行われない」「望むような葬儀が行われない」「「家」が途絶えてしまう」(図表1参照)。
265歳以上の家族の状況、子どもの同居等状況、考え方
今回、分析対象とする65歳以上の家庭環境などはどうなっているだろうか。65歳以上の婚姻状況や子どもの有無、子どもとの同居等状況、価値観を図表2に示す。全体の8.8%が未婚、75.7%が既婚(配偶者あり)、10.1%が離別、5.4%が死別していた。全体の75.7%に子どもがいた。また、全体の74.3%(382人)に就学を終えた子どもが、3.1%に未就学~就学中の子どもがいた(図表略)。
図表2 65歳以上の家族構成等、および価値観等
就学を終えた子がいる382人について、同居する就学を終えた子がいる割合が34.8%、同居する子はおらず、日常的に行き来できる範囲に住んでいる就学を終えた子がいる(以下「近居」とする。)割合が39.3%、同居と近居はおらず、離れたところに住んでいて日常的な行き来は難しい就学を終えた子がいる(以下、「遠居」とする。)割合が25.9%だった。サンプルサイズが小さいものの、地域別にみると、関東地方で「近居」が多い等地域による差がある可能性があった。

就学を終えた子の同居等状況別に、対象者の年齢をみると、同居は68.3歳、近居は69.6歳、遠居は68.9歳だった。
図表3【「親の面倒は子どもがみるべき」と思う割合】【「終活をしている」割合】 晩年に関する不安に影響があると考えられる「親の面倒は子どもが見るべきである」といった価値観を持つかどうかをみると、「親の面倒は子どもが見るべきである」は、男性が29.9%と、女性を10ポイント以上上回った。

また、こういった不安に対して、自分自身の考え方を整理したり、家族・親族等に伝える準備として「終活4」を行っているかどうかをみると、「終活」は、女性で35.4%と、男性を10ポイント以上上回った。
 
4 調査票では、「終活」には「よりよい最期を迎えるため、または遺された家族への負担を減らすための準備」という説明を付けた。
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療、生保市場調査

経歴
  • 【職歴】
     2003年 ニッセイ基礎研究所入社

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