コラム
2014年07月08日

続・買ってはいけない!?外国人が大量に買った株 Part1:やっぱり買わなくてよかった

金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト 井出 真吾

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勝手な思い込みは禁物
   梅雨時になると「外国人が買った株はこれだ」という記事を見かける。科学的な視点を重視する筆者はこういう記事を見ても「だから何?」としか思わないのだが、有名な経済メディアなどに載っていたら「この株を買えば儲かりそうだな」と思い込む人もいるだろう。

実際はどうなのか。筆者は1年前に「買ってはいけない!? 外国人が大量に買った株」というレポートで、外国人持ち株比率の増減とその後の株式収益率(株価の値上がり益と配当収入の合計)の関係を過去10年のデータで検証した。結果は、“外国人が大量に買ったか売ったかは、その後の株式収益率とほとんど無関係”というものであった。

当時このレポートを読んだ方から、「過去はそうだったかもしれないけど、今後も同じとは限らないのではないか。アベノミクスで市場環境も変わったことだし。」と指摘を頂いた。外国人に追随して同じ株を買えば自分も儲かると思いたいのだろうか。


やっぱり買わなくてよかった
   あれから1年、読者の“願望”を検証するため、外国人が買った株の“その後”を追跡調査した。調査方法は、(1)東証に上場する3月決算の大企業約370銘柄を外国人持ち株比率の増減(2012年3月末と2013年3月末の差)で5つのグループに分け、(2)各グループについて毎月の株式収益率の平均値を求める。図1は各グループと全体平均の収益率の差を累計(超過分を足し算)したものだ。

はじめに、持ち株比率が変化した期間に相当する2012年度を見ると、外国人が大幅に買い越した銘柄は収益率が最も高かった。ところが2013年度はグラフが横ばいだ。つまり「約370銘柄の平均並みに過ぎなかった」というのが2012年度に外国人が大幅に買い越した銘柄の平均的な姿である。

アベノミクスで市場の雰囲気は大きく変わっても、やはり外国人が大幅に買い越したか否かと“その後”の収益率とは無関係であった。もし1年前に追随して買っていたら、市場平均(インデックスファンド)並みの収益しか得られず期待はずれの結果になっていた可能性が高い。


図1:外国人の売買と“その後”の収益率はやっぱり無関係だった


外国人が大量に買った株の“その後”は玉石混交
   「外国人が大量に買った株」に焦点を絞ってもう少し調べてみよう。図1の“大幅買い越し”に該当する75銘柄を、“その後”の収益率の大きい順に並べると図2のとおりであった。

図2:“その後”の収益率は差が大きい(2012年度の「大幅買い越し」75銘柄

75銘柄のうち上位25銘柄は収益率が20%を超え、同じ期間の日経平均(約8.0%)を大きく上回った一方、下位24銘柄はマイナスだった。銘柄によって“その後”の収益率は差が大きいことが分かる。

このように「外国人が大量に買った株」は玉石混交なので単に追随買いしても儲かるとは限らない。逆に言うと“その後”の収益率が高い銘柄を選ぶことができれば日経平均を大きく上回る収益を得られる可能性がある。問題はどうやって選ぶかだ。Part2では有望銘柄の選び方を探る。

(Part2に続く)


 
 株主情報が公表される時期を考慮して2013年6月~2014年5月とした。
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金融研究部   主席研究員 チーフ株式ストラテジスト

井出 真吾 (いで しんご)

研究・専門分野
株式市場・株式投資・マクロ経済・資産形成

(2014年07月08日「研究員の眼」)

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