コラム
2013年07月16日

「研究員の眼」-眼力(めぢから)を鍛える

土堤内 昭雄

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今年7月4日、当社は設立25周年を迎えた。私は設立当初から研究員として働いているが、この25年間、ずっと心掛けてきたことがひとつある。それは社会の本質に少しでも迫るために、固定観念に囚われず、物事を柔軟に考え、多様なものの見方のできる『研究員の眼』を大切にすることだ。

「時計回り」といえば「右回り」のことだが、何故、時計の針は右回りなのだろう。以前読んだ本には、今日のアナログ時計は北半球の日時計を起源とし、その影が右回りに移ることからそうなったという。もし、南半球で最初のアナログ時計が作られていたら、その針は左回りになっていたかもしれない。

また、南半球では、南北逆の世界地図がある。北半球では、北が上になる世界地図が一般的だが、南半球の国々で自国が上になる上下逆の世界地図が使われていたとしても何の不思議もないだろう。

私が子どもの頃から見慣れてきた世界地図は、日本が中央にあり、右(東)側に太平洋を挟んで南北アメリカ大陸が、左(西)側にヨーロッパとアフリカ大陸が広がっていた。しかし、30代でアメリカ留学したときに教室で見た世界地図は、アメリカ大陸が中央にあり、右(東)側は大西洋をはさんでヨーロッパとアフリカ大陸が、左(西)側は太平洋を挟んでアジア・オセアニアが広がるものだった。

どの国の世界地図も自国が中央にあり、そこを基点に世界をみることは自然だろう。しかし、その基点を変えると世界の姿は大きく異なってみえるものだ。ヨーロッパを中心にした世界地図をみると、日本は右端に位置し、まさに極東“Far East”という意味が実感できる。アメリカを中心にした世界地図をみると、清教徒がメイフラワー号に乗ってイギリスからアメリカ東海岸に漂着したことも頷ける。北極圏を中心とした世界地図からは、航空機の北極圏ルートがいかに有効であるかがわかる。

我々が暮らす地球は3次元で、そこに存立する現代社会はさらに時間軸が加わった4次元の世界だ。その実態を正しく理解するためには、2次元の平面に展開する様々な事象を組み合わせなければならない。読み取る視点により認識される社会像は異なる様相を呈するが、それはいずれも真実の一部だ。シンクタンクの研究員には、それを多様な視点から立体的に読み解く「眼力」が必要なのだ。

研究員生活25年が経過し、様々な経験を積んできたが、それが「自由な発想」を妨げることもある。80歳で3度目のエベレスト登頂に成功した三浦雄一郎さんは、常にチャレンジすることで脳を若々しく保っているという。過去の実績を踏まえながらも、それに拘泥することなく、新たなものの見方や考え方にチャレンジする『研究員の眼』の「眼力」を鍛えつつ、次の四半世紀を踏み出したいと思う。

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