コラム
2013年01月15日

ご祝儀の相場水準はどれくらい? - 過去の大発会を振り返る

新美 隆宏

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カレンダーに恵まれた年末年始の休暇が明けて、株式や為替などの国内外の各市場が本格的に動き始めた。特に今年は、日本取引所グループ発足後の最初の大発会であった。年始恒例のニュース映像である晴れ着姿の女性を思い出す方もいるのではないだろうか。ところが、今年は1月5日に行われた築地市場の初競りに話題を奪われてしまった。

東京・築地の中央卸売市場で5日早朝に行われた「初競り」で、青森県大間産のクロマグロ(222kg)が1億5540万円(70万円/kg)で競り落とされた。この金額は、過去最高値であった昨年の5649万円(21万円/kg、269kg)の約3倍の水準であり、ご祝儀相場とは言え驚くべき高値である。
   初物に対する関心は江戸時代も高かったようだ。「初物を食べると75日寿命が延びる」と珍重され、数ある初物の中でも「初鰹」「初鮭」「初なす」「初きのこ」が初物四天王と言われていた。初鰹1尾が3両と、これもまた驚くほどの高値になったことがあるようだ。「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」と、当時の様子を詠んだ山口素堂の有名な俳句もある。
   初物に対するご祝儀相場は、時代を超えたものかもしれない。

ご祝儀相場はマグロや鰹だけではない。株式市場でも、新年最初の営業日である大発会の取引は上昇することが多い。これは、新たな1年の株価上昇を願うお祝いムードや、年末にポジションを小さくした投資家の買戻しなどが要因と言われている。そこで、株式市場の新年のご祝儀がどの程度の水準であるかを、実際のデータで見てみたい。
   年末年始のポジション調整などの季節要因の影響を除くため、大納会(年末最後の営業日)を含む年末5営業日と大発会の翌日からの年初5営業日の10営業日間の日経平均株価(終値)の平均値と、大発会の日経平均株価(終値)の水準を比較したものを、「株式市場のご祝儀の水準」とする(下図表1~3を参照)。1976年から2013年までの38年間で、「株式市場のご祝儀の水準」がプラスとなったのは26回、全期間を通じた平均値は+0.66%、最も高かったのは1992年の+5.51%であった。さすがに何倍もの高水準となることは無いが、株式市場でも若干のご祝儀(プラスのリターン)を期待することが出来そうである。

今年の「株式市場のご祝儀の水準」はプラスであった。民主党から自民党へ政権が交代し、アベノミクスによる景気回復への期待が大きいことの表れかもしれない。「株式市場のご祝儀の水準」がプラスであった過去25回中、年間の収益率がプラスであった年は15回あった。長いトンネルを抜けて、日本経済の力強い回復を実感できる年になることを期待したい。


株式市場のご祝儀水準/株式市場のご祝儀水準(集計表)/大発会と前後5営業日の株価指数の推移



 
  米価から計算した金1両の価値は、江戸初期で約10万円前後、中~後期で4~6万円、幕末で約4千円~1万円(日本銀行貨幣博物館ホームページより)
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新美 隆宏

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