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最近の領土問題をめぐる日中および日韓の緊張関係を改善するためには、異文化を理解し、市民同士の交流・理解に基づく相互信頼・規範・ネットワークである『グローバル・ソーシャルキャピタル』が必要だ。では、『グローバル・ソーシャルキャピタル』を育むためには、どうすればよいだろう。
歴史や文化が異なる国の間では、様々な価値観の相違があることは当然だ。その中で相互理解を深めるためには、まずは相手国の人の暮らしを知り、それを自分で直接見て、聞いて、感じることが大事だろう。相手の価値観を良い悪い、好き嫌いと評価することなく、まずは理解することだ。
私はこれまで一番近い隣国・韓国へ行ったことがなかった。そこで先日、わずか3日間だが、韓国・ソウル市を訪ねた。韓国語ができない私は、日本語が話せる韓国人・Tさんの経営する宿に泊まった。毎日、地下鉄や市バス、そして徒歩で街中をめぐり、そこで見たこと、聞いたこと、感じたことの中からTさんに質問を試みた。そして韓国の生活習慣、家族関係、社会保障、雇用、教育、交通、都市づくり、歴史、文化、スポーツなど、表面的かもしれないが多くのことを学ぶことができた。
生活習慣の違いで面白い体験があった。私はTさんの宿に着いて、玄関で靴を反転させて揃えた。後から聞くと、韓国では玄関の靴は向きを変えずに揃えるそうだ。靴先を外に向けると歓迎して(されて)いない意味になるという。また、食事の時に茶碗を持つことは失礼だと事前に聞いていたので、その理由を尋ねてみた。韓国ではかつて貧しい人は立ったまま茶碗を持って食べたそうで、茶碗を持つことは貧しい人の食べ方とされているからだという。
また、私が夜ひとりで焼き肉店で食事をしていると、酒を飲む時に顔を少し横に背けて飲む人がいた。韓国では目上の人の前で酒を飲む場合はそのようにするそうで、それを知らないとトラブルを起こす可能性もあるだろう。「百聞は一見に如かず」であり、「郷に入りては郷に従え」である。
今回の韓国旅行で、私は住宅地で道に迷い近くの交番の警察官にお世話になったり、地下鉄の電子マネーのチャージ方法がわからずコンビニの店員さんに手伝ってもらったりした。このような市民一人ひとりの交流は、国家による外交のような大きな変化を生むことはないかもしれない。しかし、市民同士の小さな交流の積み重ねが『グローバル・ソーシャルキャピタル』を育み、国際社会の発展と安定をもたらす。異文化を理解するための草の根の市民の行動が、膠着する領土問題解決に向けた小さくとも確実な一歩になると信じたい。
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