コラム
2011年12月28日

発表された総合特区の指定地域・・・政府の「新成長戦略」実現の柱

青山 正治

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政府は2011年12月22日に、新成長戦略実現の柱となる総合特別区域(総合特区)の指定地域を公表した。2パターンある総合特区の内訳を見ると、「国際戦略総合特区」として7地域、「地域活性化総合特区」として26地域が指定されている。この総合特区は、2010年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」に構想として盛り込まれ、その後、2011年6月22日に総合特区を実現するための法律、「総合特別区域法」が成立し、8月1日に施行された。次いで、8月15日に「総合特別区域基本方針」が決定され、同日から9月30日まで全国各地の地方公共団体が「地域協議会」等の協議を経た後に指定申請を行い、総合特区推進本部の意見を聞きつつ内閣総理大臣が指定している。

この総合特区は新成長戦略を実現するための様々な政策課題解決の突破口として位置づけられ、国際競争力の強化や地域の活性化のための包括的で先駆的な地域プロジェクトを支援する内容である。具体的には規制・制度の特例措置や税制(法人税の軽減など)・財政(各府省庁の予算制度を重点的に利用など)・金融上(利子補給制度)の支援措置を総合的に実施する内容となっている。今後、指定地域ごとに国と「推進方針」を策定後、設置される「国と地方の協議会」で調整し、国が法令等の改正を措置する。その後、各指定地域は「総合特区計画」に特例措置・支援措置の対象事業を記載し、国の認定を受ける手順となる。

上記のとおり「国際戦略総合特区」には7地域(プロジェクト)が指定された。少し長くなるが列挙すると、(1)北海道(及び4市・16町・2村・1団体)「北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区」、(2)茨城県・つくば市・筑波大学「つくば国際戦略総合特区~つくばにおける科学技術の集積を活用したライフイノベーション・グリーンイノベーションの推進~」、(3)東京都「アジアヘッドクォーター特区」、(4)神奈川県・横浜市・川崎市「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」、(5)岐阜県・愛知県(及び両県の7市・1町・1村・1団体)「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」、(6)京都府・大阪府・兵庫県(及び3市)「関西イノベーション国際戦略総合特区」、(7)福岡県・北九州市・福岡市「グリーンアジア国際戦略総合特区」の7地域である。プロジェクト内容は多様であり、かつ複合的な経済効果を狙っている。

「地域活性化総合特区」には府県や市町村、大学や企業・団体が、単独又は合同で申請した中から26地域が指定された。数が多く紹介は割愛するが、それぞれ「新成長戦略」の7分野について、地域独自の資源活用や地域活性化に関するプロジェクトが指定を受けた。以上の総合特区におけるプロジェクト内容は、今後、「国と地方の協議会」における調整などを経て、計画の実現化へ向けスタートが切られよう。

これまでも、日本の国内・各地域には様々な技術的シーズや、地域資源、人的資源、資金などの多様な“資源”が存在してきた。しかし、それらが横断的に結合され十分に活用されているとは言い難いと思われる。個々のポテンシャルの総和は高いものの、各要素を有機的に結びつけて積としての相乗効果を具現化するイノベーション・マネジメントが成果を挙げていないようだ。筆者は、総合特区の仕組みを作ることで、自己の技術や知恵だけでなく外部の技術や知恵をも組み合わせる形での「オープンイノベーション」が喚起され、停滞する経済や社会の場面でのブレークスルーが出現することに期待している。このブレークスルーに向けての展開を加速するには、スピード感のある合意形成と実行速度が不可欠と考えるので、総合特区が威力を発揮するには、この要素を備える必要があろう。各地域の多様な資源を活かした特色ある産業クラスターや国際的なビジネス拠点の構築へ向けての総合特区のスタートからは目を離せない。
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