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シンクタンクならニッセイ基礎研究所レポート研究員の眼 大都市への人口集中?は望ましくないのか

大都市への人口集中?は望ましくないのか

2007/05/14

篠原 二三夫

社会研究部門
電話番号:03-3512-1791
e-mail:fshino@nli-research.co.jp

研究員の眼2007年5月14日

総務省が4月26日に公表した2006年住民基本台帳移動報告に基づいて、翌日の日本経済新聞は、東京圏等はバブル期並の高水準の転入超過(転入者−転出者)となり、地方から大都市への人口移動が加速していると報じた。しかし、東京圏の転入超過数は1987年の約16万人をピークに減少し、最近は増加に転じたものの、2006年では13万人と87年の80%水準に過ぎない(内訳の転入者数と転出者数は共に87年の約80%まで減少)。

この間に全国の人口移動総数は、654万人から556万人へと15%ほど減少している。景気要因による多少の変動はあるが、この減少傾向は高度成長期以降の長期的トレンドである。全国が15%減少する中、東京圏の転入と転出数の減少が同期間に約20%ということは、東京圏への人口集中は相対的に縮小しているという見方ができる。実は名古屋圏や福岡等の地方都市への移動、各都市圏内や都道府県内移動の方が相対的に拡大しているのである。

かつて、人口のみならず政府や産業、学術、国際など様々な中枢的都市機能が東京に一極集中し地方と対峙する問題となった。東京圏内では地価高騰や交通混雑・通勤難等などが都市問題として掲げられた。しかし、これらの問題も緩和しつつある。

高度情報化と透明性の拡大によって、諸機能を司る情報や世界の様々な価値ある情報を、今や日本各地で誰でも容易に活用できるようになった。規制緩和を通じて、緩慢ではあるが、徐々に地方産業が再生し魅力ある地域が生まれている。企業の集約による効率化が進んでいるが、効率化優先のため都市部立地でも規模の拡大は抑制されている。これらは人口移動を必要最小限にとどめている。

都心居住による人口回帰によって東京の下町には活気が蘇り、遠距離通勤や混雑の緩和に寄与している。一方、周辺部では総じて居住環境への配慮が高まり、成熟化に向けたまちづくりが始まっている。このように、移動総数が減る中で、地域内での移動が相対的に高まる状況は東京以外の都市圏でも生じており、各々の地域構造を変えつつある。

現在生じている大都市圏や地方都市への人口移動、都市圏内移動の変化は、東京vs.地方という対立的構図を越えた都市部と非都市部における諸機能の役割分担や適切な人口配置を背景とした自律的な動きであり、豊かな国土や地域構造の形成に向けた望ましい動きとみるべきである。

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